沖縄戦学ぶ実践報告 本紙も活用 NIE全国大会

 第19回NIE全国大会(主催・日本新聞協会)最終日は1日、徳島市のあわぎんホールで公開授業や実践報告、分科会を行った。
 徳島文理中学校の立石有礎教諭は2011年度に川内中学校で行った沖縄戦を学ぶ実践を報告。沖縄タイムス、琉球新報の地元2紙を取り寄せ、慰霊の日の報道を全国紙と読み比べたり、切り抜き新聞を作ったりした。
 「新聞を読むようになって社会の様子に興味が湧き、家族で話すようになった」との声が上がったと紹介。今大会のスローガンの造語で、新聞を読んで社会を知り意見を持つ市民という意味の「よき紙民(しみん)」が育ちつつあると報告した。

大学でのNIEについて議論した分科会=1日、徳島市・あわぎんホール

 「大学教育に新聞を」分科会では、小学校から高校までNIEを展開しているものの大学生になると新聞購読率が低いとの事例が大学教員らから挙げられ、新聞がある環境づくりの大切さが指摘された。
 次回大会は来年7月、秋田県で開催される。

11月1日にフォーラム 興南中が公開授業 県NIE推進協総会

 県NIE推進協議会(山内彰会長)は11日、那覇市の沖縄タイムス社で総会を開いた。11月1日に興南中学校の公開授業を中心とするNIE実践フォーラムを開くことなどを決めた。
 加盟新聞社、NIEアドバイザーら12人が出席。NIEの実践を広く知らせるため映像資料を作ってはどうかといった意見があった。
 山内会長は「教育行政とのパイプが強くなり、研修でも取り入れられるようになってきた」と2013年度の活動を振り返り「さらに深まりを持たせるため、新聞社の皆さんには実践に取り組む教師を紙面で応援してほしい」と要望した。

 

[出前記者]取材のコツ 記者指南 首里中生 新聞制作で授業

 那覇市立首里中学校(喜瀬乗英校長)で2日、本紙記者を講師に招いた出前授業があった。地域の人を取材して新聞を作るのを前に、1年生260人余りが記者の模擬インタビューを聞いたり、互いに質問し合ったりして学んだ。

喜瀬乗英校長(右)への模擬インタビューを見て学ぶ中学生=2日、那覇市・首里中

 体育館に集まった生徒は、沖縄タイムス政経部の篠原知恵記者(26)が喜瀬校長に教師になったきっかけなどを質問するのを聞いた。篠原記者は事前に学校のホームページで校長のあいさつ文を読み質問を考えたが「準備した質問に縛られずに話すことを楽しんでほしい」と助言した。
 インタビュー写真を撮影した写真部の田嶋正雄記者(42)は「座った相手を立ったまま撮ると見下した写真になる。相手の目線から撮るのが大事」と解説した。
 講話の後は、ペアになって「中学生になって楽しいこと」などをテーマにインタビューし合った。大城一輝君(12)は「話を広げていくのが難しかった。地域の人が仕事に感じているやりがいが伝わる新聞を作りたい」と話した。生徒らは夏休み明けに地域の人に取材し、新聞作りに取り組む。

記事集め夏休みの宿題に 大里中生、こつ学ぶ

 夏休みの宿題で新聞記事を集めるため、新聞の読み方を学ぶ授業が2日、南城市立大里中学校であった。全ページの見出しを10分間で読み、気になった記事について1分間で説明した。

新聞を広げ、気になった記事を紹介し合う生徒たち=南城市立大里中学校

 社会科の兼松力教諭が2年生に毎年課している宿題は、沖縄に関する記事を1人30枚以上集めること。休み明けに3人ほどのグループをつくり、記事を持ち寄ってテーマを定め、切り抜き新聞を作成する。
 この日の授業は、見出しを読むことで大意をつかむのが狙い。生徒は選んだ記事についてグループ内で1分間、話し続けるという課題に取り組み、達成すると拍手が起こった。
 兼松教諭は「ほかの人が意外な記事を選んでなかった? 新聞は自分の世界を広げる道具になる」と、生徒に語り掛けていた。

継続活用 表現力増す NIE実践指定校 報告会

 NIE実践指定校の報告会(主催・県NIE推進協議会)が4日、那覇市久茂地のタイムスホールで開かれた。日本新聞協会指定と県推進協指定の計12校が発表、2校が紙面報告した。新聞を授業や朝の活動で継続的に使うことで読解力や意見などの表現力が高まっていることなどが紹介されたほか、教科内容に組み入れた例などが報告された。

知識を吸収し消化 新垣和哉教諭(喜瀬武原小中学校)
 NIEの効果を数字で図るのは難しいが、児童・生徒が変容していくのを体感できる。知識を吸収し、消化し、はき出せるようになる。引っ込み思案な子どもたちが、自分の考えをまとめ発信する機会をつくりたい。
 当校は小学生30人、中学生14人。規模の小ささを生かし、小中合同で取り組んでいるのが特徴だ。関連性のある記事を選ぶ作業をさせると、たとえば小学生は水族館の入場者数と釣りの記事を結びつけることもある。その発想が面白い。逆に中学生のやり方や考え方を見て小学生が学ぶことも多い。
 取り組み内容の掲示は、事務員や図書館司書が大いに動いてくれた。みんなを巻き込むことで、学校全体のNIE理解が深まる。

 

続けるうちに変化 當銘直美教諭(真喜屋小学校)

 3~5年生を中心に、新聞を活用している。3年生では「私が○○と思った写真」をテーマに、新聞から写真を選んでもらう授業をした。最初は「すごいと思ったもの」ばかりだったが、続けるうちに「心配だと思った写真」としてヤンバルクイナの事故記事を切り取ってきたり、「危ないと思ったもの」としてオスプレイが民家上空を飛行しているものを選んだりと、視点が変わってきた。
 1こまずつ切り離した4こま漫画を基に、意見を出し合う授業にも取り組んだ。子どもから、新聞でこんなに面白いことができると思わなかったとの声が出た。
 新聞を身近に感じる児童が増えてきたが、NIEを日常化するため活用法の研究と具体化が不可欠と感じている。

 

学びと社会つながる 宮城良子教諭(右)高良真弓教諭(陽明高校)
 新聞記事を活用することで、教科書で学んでいる単元と、社会とのつながりに気付いてもらうことができた。世界、沖縄の政治や経済を身近に感じ、自分なりの意見を持つこともできた。
 政治経済の授業では、単元ごとに関連する記事を取り入れている。新聞から質問を出したプリントを作成し、意見も書いてもらう。定期試験でも、必ず新聞から出題。切り抜いた記事を基に、生徒それぞれが選ぶ「十大ニュース」も発表してもらった。
 保健体育の授業でも、健康や環境などの分野で興味のある記事を選んでもらった。グループ内で発表し、友人同士で情報を教え合っている。今後は情報が偏らないよう、さまざまな記事を提供していきたい。

意見交換が活発化 石川美穂教諭(興南中学校)
 全学年の国語で、「新聞リレー」に取り組んだ。気になる記事とともになぜその記事を選んだかや、気付いてほしい点を書き、次の生徒がそれに答えていくというもの。生徒間の意見交換が活発になり、想像以上の効果があった。
 毎日の宿題として、四季や伝統行事などへの理解を深める、コラムを使ったワークシートも取り入れた。
 東京五輪の開催が決まった時には、各社が出した号外を読み比べ。見出しの違いを見ながら、読み手に伝わる印象の違いを考えた。
 NIEを始めて、生徒たちの国語力は伸びてきている。一定の成果があるが、今後はさらに効果を見据えた取り組みが必要。NIEを広げる上でも、欠かせないことだと思う。

 

きらりアイデア(ほかの実践校の事例)

小禄南小学校…児童の作品を保管し、異動してきた教師と共有。
伊野田小学校…地域の人も利用できる新聞コーナーを設置。
浜川小学校…全学年で週1回朝のNIEタイム。読み聞かせなど。
中原小学校…3年生が同じ部首の漢字探し。教科書では文字が少ない。
越来小学校…毎週末親子でスクラップ。会話弾む(4年生)。
沖縄アミークスインターナショナル…4こま漫画を壁一面に掲示。まず関心を高める。
宮良小学校…見出しだけ切り抜き。「短くても伝わる」(5年)。
コザ小学校…委員会活動を取材し、伝えたいことを見出しに(5年)。
伊平屋小学校…1年生も授業参観日に親子で切り抜き新聞作り。
沖縄工業高校…琉球・沖縄史を記事で学ぶ。資料集には記述少ない。

新聞投稿で図書カード集め被災地に贈る 喜瀬武原中生

 3年前から新聞のオピニオン欄へ投稿を続ける恩納村立喜瀬武原中学校(西野朗校長)の生徒が、掲載後に沖縄タイムスなど県内2紙から届いた500円の図書カード1万円分を東日本大震災の被災地へ寄贈する。生徒らは「好きな本を読んで元気になってもらいたい」と思いを込めた。カードは震災などで移住を余儀なくされた地域へ図書館の設置を支援する団体「みんなのとしょかん」を通じて被災地に送られる。

東日本大震災の被災地へ図書カードを送る喜瀬武原中の生徒たち=喜瀬武原中学校

 東日本大震災が起きた2011年3月、卒業式の準備をしていた当時の3年生が「被災地のために何か役に立ちたい」と国語担当の渡慶次よりえ教諭と相談し、新聞投稿でもらった図書カードの寄付を決めた。
 3年生は卒業したが、後輩が意思を受け継ぎ、授業や学校行事で感じたことをつづり積極的に投稿、20枚のカードがたまった。投稿数は全生徒で延べ60回を超え20回掲載された。渡慶次教諭は「子どもたちの思いが被災地に伝わってほしい」と目を細める。
 投稿最多で4回掲載された3年の與儀美羽さんは「大切な物がたくさん無くなった被災地の人に大好きな本を買ってもらえればうれしい」と期待。投稿を通して「自分の意見をまとめるのがうまくなった。1分間スピーチも上達した」と思わぬ効果もあった。
 1年の大城幸輝君は「人助けにつながることは今後も続けたい」と支援の継続を決意。「喜瀬武原の良いところを書いて投稿文が載ったらうれしい。被災地に図書カードが送れるようにこれからも頑張りたい」と意気込んだ。

【2014/03/31追加情報】

 「みんなのとしょかん」のブログで紹介されました。

新聞の活用例 教員らが紹介 NIE実践報告会

 2013年度県NIE実践報告会(主催・県NIE推進協議会)が4日、那覇市久茂地のタイムスホールで開かれ=写真、日本新聞協会指定実践校9校と県指定校3校が、新聞の活用事例を発表した。(7日付教育面で詳報)

各校の取り組みに耳を傾ける教諭ら=4日、那覇市久茂地・タイムスホール

 全学年で授業などに新聞を取り入れている沖縄市立コザ小学校は、記事を基に話し合いをしたり、4こま漫画のせりふを考えたりと、無理なく継続できる実践をしている-と紹介。神山英教諭は「新聞は学び合いに適切な教材。子どもたちにさまざまな見方、考え方が広がっている」と手応えを語った。
 石垣市立伊野田小学校は、児童だけでなく、地域の人も自由に新聞を閲覧できるコーナーを設けている。授業参観日にはNIEの授業を実践。保護者の関心も高まってきた-という。
 石田美喜子教諭は新聞に親しむ環境を整えたことで、これから読み書きを学ぶ幼稚園児も新聞を見ることがあるとし、「子どもたちは興味のある情報や必要な情報を探すことができるようになった」と話した。