読み聞かせが親子に刺激
島袋久仁人さん(48)=沖縄タイムス社社員、西原町=一家の朝は、久仁人さんが新聞記事を読み上げる声から始まる。
「米韓FTA(自由貿易協定)が発効すれば…日本が、韓国との輸出競争で不利になる…」(10月14日付本紙)。午前6時すぎ、朝ご飯を食べる長男の敦也君(13)のそばで、その日起床してすぐに選んでおいた記事1、2本を、優しく軽快な口調で紹介していく。
父の声に、相づちを打ったり、質問したりする敦也君。バスケットボールの早朝練習に向かうまでのわずか10分足らずのやりとり。しかし朝から夜まで部活動に打ち込む中学1年生を持つ親にとって、新聞を通した触れ合いは、とても大事で貴重な時間だ。
きっかけは、「『ビールはお酒』ロシアが認定」(9月6日付)の記事。「話題にしたら息子が『ええっ? 何で酒とされてなかったの』と反応してくれた。それで記事を読んで聞かせた」
「何で子どもは酒を飲んだら駄目なんだろう」(久仁人さん)
「成長が遅れるからかなぁ」(敦也君)
1本の記事を通した問い掛けから会話が生まれた。それ以来、読み聞かせは日課になった。
息子に読み聞かせる題材を探すために、新聞の隅々にまで目を通すようになった。毎朝6時には起きて紙面を開く。動植物、宇宙、発明…興味を持ちそうなものを選んでは読み聞かせた。盛り上がると、登校する道すがらの車中でも会話が続いた。
敦也君は「最初は、面倒くさいと思ったけど、興味を引く話題もあって、面白いと思うようになった」と話す。
記事の背景の説明、難しい用語の説明などは、もちろん父が担うが、ゲーム機などの話題になれば主役は交代。息子の話に父が聞き入る場面もあるという。
将来を考えると、息子に新聞を読む習慣を付けて社会に関心を広げてもらいたかった。一方で、小言を言っても効果がないことも感じていた。たどり着いたのは、率先して新聞を読む姿を見せることだった。
朝のやりとりを見守る妻の恵美さん(38)は「父と子のコミュニケーションの時間です。とても貴重だと思う」とほほ笑む。
敦也君は「新しいことを知ると、得した感じがしてうれしい」。話題を拾うために新聞を読む父について「よく毎日、続けられるよなぁと思う。ちょっと尊敬できる。以前より会話が増えたし」と話す。
息子の知的好奇心を刺激した上に、少し株を上げた父親。朝読んだ新聞記事を切り抜き、スクラップ帳に貼り付けるという夜の作業も日課に加えた。
ただ敦也君は、まだスクラップ帳を開いたことがない。それでも久仁人さんは読むことを押し付けようとしない。「いつかスクラップ帳を開いてくれればいい。いつか新聞を読む習慣が身に付いてくれればいい」と、のんびり構えてカッターナイフを握る。
「声出して読む」がいい
豊見城中学校教員でNIEアドバイザーの仲程俊浩さんの話 親が声に出して読むという発想がいいと思いました。漢字や言葉の意味を説明しながら行っているところもいいと思います。社会への関心が広がるし、親子関係も深まる一石二鳥の取り組みですね。
関連記事がありません
次の記事:島袋さんちのNIE(1)読み聞かせ/雪男「生息可能性95%」