批判的思考力 育む・問い 社会を見抜く(第20回NIE全国大会秋田大会)

 

批判的思考力 育む / 問い 社会を見抜く(第20回NIE全国大会秋田大会)の模様です。

 小中学生の学力が全国トップレベルの秋田県で7月30、31日、新聞を使った教育の進め方を考える第20回NIE全国大会秋田大会が開かれた。スローガンは、「『問い』を育てるNIE-思考を深め、発信する子どもたち」。初日は講演や討論があり、「21世紀型学力」としての批判的思考力の重要性や、秋田のNIEで深い学力が養われる理由を明らかにした。2日目の公開授業では、新聞を基に随所で「問う」子どもの姿があり、特別分科会は学力向上と新聞活用の相関を議論した。沖縄から参加した教育関係者は児童、生徒の主体性や多様な実践に目を見張り、「沖縄にも『問い』や批判的思考力を育む潜在力がある」と意欲を高めた。教育面で16日付から7人の感想を詳報する。

8月12日紙面NIE全国大会秋田大会特集:8月12日紙面はここから(特集1)

 8月12日紙面NIE全国大会秋田大会特集:8月12日紙面はここから(特集2)

 

 

 

 

2014スクラップコンテスト全入賞者名

 第4回沖縄県新聞スクラップコンテストは過去最高の3157点の応募がありました。11月25日に最終審査を行い、12月13日に県知事賞、県教育長賞、沖縄タイムス社賞の35人を表彰しました。ほかの賞は順次、学校・自宅に表彰状を送ります。全入賞者名を特設ページに追加しました。

スクラップコンテスト 学校での活用例

 第4回沖縄県新聞スクラップコンテストを学習計画に位置付けて活用している学校もある。部門と校種別に取り組みを紹介する。

週末の宿題 保護者も参加
ノート・比屋根小学校

 沖縄市立比屋根小学校は6年生が週末の宿題としてスクラップノートに取り組んでいる。自分で選んだ記事の5W1Hに線を引き、要約とともに感想を書く。保護者がコメントを書くのも特徴だ。

比屋根小のノート。5W1Hに線を引き、大事なところにマーカー。保護者も毎回コメントしている

 NIEアドバイザーでもある佐久間洋教諭を中心に学年全体で6月から実施。佐久間教諭は「文章を書く量が増えたこと、いろいろな視点を持てるようになったのが成果」と手応えを感じている。
 児童は保護者の感想を読んだり、ほかの子のノートを読む機会を設けることで同じ記事でも考えることが違ったり、同じだったりすることを体感している。

 

作品のメッセージ 明確に
切り抜き新聞・興南中学校

 興南中学校は2年前のコンテストから学年単位で応募。今年は全生徒が作品を作った。

興南中の作品例。模造紙中央に訴えたいメッセージを書き、テーマに沿った多様な記事と感想が書かれている

 社会科の授業の一環。夏休み前から個人でテーマを決めて記事を集め、2学期に分類する。その際、すべての記事に感想を書くので内容を読み込むことになる。事実を書いているのか、意見なのか。記事の性格を理解して自分の作品に効果的な使い方を考える。
 重視するのは作品を見る人に伝えるメッセージを明確にすることだ。門林良和教諭は「社会の問題を自分の問題に置き換えられる意義が大きい。社会に対するアンテナの感度が高くなる」と授業への波及効果を期待した。

自分の将来 結びつけ読む
感想文・具志川高校

 具志川高校は今年から記事の感想を書く実践を始めた。社会科各分野の「応用」は進路対策と位置付けられるが、推薦入試、センター試験、専門学校などと進路が多様で一律の授業は難しい。週2時間あるうちの1時間は新聞スクラップに取り組み、時事問題を学ぶ機会とした。

具志川高校の作品例。ワークシートに意見がたくさん書き込まれている

 初めは記事の読解が浅く、自分の考えが持てない生徒も見られたが、続けるうちに書く内容が深まってきた。進路指導部の譜久山ゆかり教諭は「例えば知事選の記事でも自分の将来と結びつけて、こうあってほしいと書いていた。自分で記事を選ぶことも感性をくすぐるようだ」と話した。

[現場のひと工夫~実践指定校紹介](2)城北小学校

教科と連動 関心高める

  那覇市立城北小学校(當山しのぶ校長、在籍797人)は本年度から日本新聞協会指定のNIE実践校になり、教科と連動させる試みを続けている。
 実践の中心となる5年生は12日、社会科の工業に関する授業で、新聞から自動車が出てくる記事や広告を探し、グループで大きな紙に貼りだしていった。今まで車に興味がなかった児童も作業や発表を通して、関心を高めた。実践代表者で5年生担任の宮城和人教諭は「5年生は社会に視野を広げる授業が多くなり、新聞が使える。記事を通して、児童同士、教師とのコミュニケーションを取りやすい」と話す。
 5年生4クラスの広い廊下にテーブルとベンチを置き、新聞を広げられる場所を設けた。ベンチに座り、新聞記事を話題にする姿も見られるようになった。
 NIE専用ノートを作り、記事を貼って感想を書く取り組みも、全国紙と地元紙の提供が始まった9月からスタート。辞書を引く習慣づけにつなげている。
 當山校長は従来「根拠を持って発信できる子」を育てることを目指していて、新聞活用を通して実現したいと実践校に応募した。「今は人に伝えることを苦しいと感じている子が多いが、伝える楽しさ、喜びを感じることで自信を持てる」と期待している。

社会の授業で作った新聞切り抜きが廊下の壁に貼られていた=那覇市立城北小学校

[実践 わたしの活用術](21)投書から人物の思い想像(中学1年・道徳)

困っている人 どう対応 見出し隠し 意図考える

投書から人物の思い想像

美東中学校 松田美奈子先生

対象 中学1年生
教科 道徳
指導時間 1時間

【授業の様子】
 沖縄市立美東中学校の1年6組で新聞の投書を使った道徳の授業が10月23日あった。
 担任の松田美奈子先生が選んだのは本紙8月23日掲載の投書で、那覇市で帰りのバスが分からず困っていた高齢の女性を、通りかかった男子高校生3人が助けたという内容。高校生は本人たちが乗る必要のない北部行きのバスに同乗したとも書いてある。
 投書を配り、印象に残った部分を挙げさせた後、自分ならどうするだろうと問い掛けた。「同乗まではできない」「バスが来るのを一緒に待つ」「申し訳ない気持ちで避ける」など。松田先生は復唱したり、共感を表したりしながら、生徒の言葉を集めていく。
 投書に書かれた女性の「感動」の中身、お礼として渡した300円にこめた気持ちなど、登場人物の心情を想像させる問いが続く。「言葉で表せないくらい大きな感謝」「まるで長い付き合いのような親しさ」など、投書の表現にはない答えもあった。最後は、配布した記事で隠した見出しを考えることで、筆者の意図にも思いをめぐらせた。
 松田先生は「残り半年、皆さんはいろいろな行事を通してお互いに関わって感動も出てくるでしょう」と、仲間を意識させるようにまとめた。

【授業の手順】
(1)体験を振り返る
 「人にやさしくされて、うれしくなったとき」「人に親切にしたとき」を問い掛け、体験を発表させる。
(2)投書を読む
 投書を読ませ、印象に残った部分に線を引かせ、発表させる。
(3)自分に置き換える
 投書と同じように、困っている人と出会ったら自分ならどうするかを考えさせ、発表させる。
(4)投書を読み取る
 グループになり、投書の登場人物の気持ちを考えてみる。グループで出た意見を発表させる。
(5)投書に見出しをつける
 配布した紙面で隠した見出しを考え発表させる。投書の書き手の意図を考えるため。

【ねらいとポイント】

美東中学校 松田美奈子先生

■ねらい
 日ごろ生徒同士の関わりが薄く、「ありがとう」と言えなかったり、思いはあっても行動に移せないと感じていました。世代の近い高校生の行動なので、自分のことに置き換えられると考えました。
■ポイント
 新聞の投書は教科書や副読本よりも書いた人の気持ちが伝わり、リアル感があります。また近い地域であった実話でもあるので、自分の生活に結びつきやすくもあります。

 

「実践わたしの活用術」は毎月最終水曜日の「月刊NIE」のページで連載します。

第8回NIE実践フォーラム事前特集:興南中学校の授業、取り組み紹介

コラム活用 思考力育む 興南中2年が公開授業

11月1日 県NIE実践フォーラム 県立総合教育センター

 第8回県NIE実践フォーラム(主催・県NIE推進協議会)が11月1日午後1時から沖縄市与儀の県立総合教育センターで開かれる。日本新聞協会指定NIE実践校の興南中学校2年生の国語の公開授業、それを基にした授業研究会、ワークショップがある。今月の月刊NIEは、フォーラム特集として公開する授業の前段の取り組みなどを紹介する。

【前段の授業】

 第8回県NIE実践フォーラムは興南中学校の公開授業を軸に進行する。授業後の研究会で授業の狙いや小学校、高校への応用法などを授業者、指導者、助言者が話し合う。ワークショップは授業の前段となるコラムの読解ワークシートに取り組む。

拡大したコラムに色を付けながら記事の構成を分析する2年生=21日、那覇市古島・興南中学校

 授業は4時間で構成され、公開するのは最後の4時間目。1時間目の授業は21日行われた。
 前泊優斗教諭が大きくコピーしたコラムを2人に1枚配る。ペンで書いたり消したりできる透明な覆いがついたボードにコラムをはさみ、2人で文章を読み解く準備ができた。
 授業を通して出てくるキーワードに「論」と「例」がある。「論」は筆者の主張、「例」は論を立てるための事例や、慣用句などの表現を指している。
 生徒は2人1組になり、透明な覆いの上からコラムの「論」には赤い線を引き、「例」のうち事例を青く囲み、慣用句などの表現に黒い線を引いていく。ボードの裏には磁石がついており、黒板に貼りつけて、ほかのペアが読み解いた結果を並べて見た。

前泊優斗教諭

 この日使ったコラムは本紙10月17日付の大弦小弦で、「煮詰まる」という慣用句の使い方についての世論調査結果から書き出し、再生エネルギー買い取り制度の見直しの議論を、本来の意味通り煮詰めるべきだと結ぶ。
 再生エネルギーを普及させるためにしっかり議論すべきだという部分が「論」に当たり、慣用句の調査が「例」として立論を支えていることを学んだ。
 この後、生徒は自分の「論」を考え、「例」となる新聞記事を探して、コラムを書く。公開授業ではグループで互いのコラムを読みながら、文章の構成や「論」と「例」に一貫性があるかどうかを検討していく。
 授業をする前泊教諭は「生徒は1年生のころから新聞コラムを読んできた。公開授業を自分の考えをしっかり表現できる場にしたい」と抱負を話した。

【公開授業までの流れ】

 今回の公開授業は全4時間の4時間目に当たる。
<単元の学習目標>
 コラムの構成を理解し、効果的に意見を伝えるための工夫を考えて書く。
☆1時間目(今回の特集記事参照)
 全員で同じ新聞コラムをペアで読み、「論」と「例」を読み解く。
☆2時間目
 自分が書くコラムの「論」を考える。「例」に当たる新聞記事を探す。
☆3時間目
 コラムを書く。
☆4時間目(公開授業)
 書いたコラムをグループで発表する。記事と「論」と「例」に一貫性があるか、コラムの構成などについて話し合う。

【日常の活動】

毎日のワークシート■学年越えリレーノート

意見交換や記述 視野広げ

 興南中学校が公開する授業は、日ごろ取り組んでいる二つの活動に下支えされている。

生徒が毎日取り組む「コラム読解ワークシート」。上にコラムを貼りつけ、毎回教師が設問をつくっている

 試験期間などを除いてほぼ毎日、新聞コラムを貼りつけたワークシートが宿題に出される。出題内容は出てくる語句の意味や文章読解といった国語的なものにとどまらず、例えば地域伝統行事の種類などコラムのテーマに合わせて文章に答えがない設問もある。
 450文字で感想や自分の考えを書かせる設問が必ず最後にある。これらの設問を解くことで、記事を読む習慣をつけ、自分の考えを文章にまとめる経験を積んでいる。
 もう一つは、新聞リレーノートだ。1年生から3年生までの縦割りグループをつくり、環境、国際、地域などグループに割り振られたテーマに関する記事を選んで感想や疑問点を一人が書いて貼り、向かいのページにほかのメンバーが付箋紙にコメントを書いて貼る。

グループで回す新聞リレーノート。1人が選んで感想を書いた記事にほかのメンバーが付箋紙でコメントを書く

 記事を探して意見を交換することを通して、社会に目を向けるとともに、他者の意見にも触れることで視野を広げている。
 中学校・高校のNIE実践代表者の石川美穂教諭は「ワークシートは広く物事を知り、読む力と書く力をつけること、新聞リレーはいろいろな視点に気付くことを狙いにしている」と取り組みの意図を話した。
 公開授業は、リレーノートで選んだ記事を題材にしてコラムを書くという、二つの活動の集大成となる。

 

 

 

 

【校長インタビュー】

新聞の話題 分かち合う  我喜屋優校長

 興南の野球部に来て、まずやったのが1分間スピーチ。北海道、東北、沖縄の子は言葉が少なく表現力が乏しかったからだ。

我喜屋優校長

 朝、散歩に行って五感を通して感じたことを指名して話させる。見本は新聞記者で、散歩は取材に行くことだと子どもたちに言っていた。道にごみが落ちているのを見て嫌だなと思ったら、他人のミスをカバーするのは守備のカバーリングに通じるなとか考えるようになる。
 初めのころは1分間しゃべれない。そんなときは練習として、新聞記事を読んで感想を言わせた。記者が書いた話題を借りて自分の感想を言うわけだから、簡単にできる。そのうち自分で話題を見つけてくるようになった。
 新聞の中にはいろいろな先生がいる。過去の人、今の人、そして未来の自分との出会いがある。また、社説を読みなさいと言っている。居ながらにして世の中のことが分かるのだから。
 伝える力を身につけさせるためには、新聞を読むだけではだめで、伝え合うことが必要。新聞にはいろいろな話題があり、それを分かち合ってほしい。
 公開授業は、普段やっていることを見てもらう。取り入れられるところがあれば、広げていってもらえたらいいと思う。

幸地さんちのNIE(122)子どもの運動 常識? 非常識?(第5回)

鬼ごっこは良い運動ね

そういえば家にも鬼が

 運動能力を養うのに、鬼ごっこがいいそうです。幸地富代さん(44)、功哲君(12)は、遊びについて盛り上がりました。

子どもの運動 常識? 非常識?(第5回)

■2014年10月12日付教育27面
 わたしが子ども時代の運動としてすすめるのは、鬼ごっこです。難しいルールは一切なく、ひたすら逃げるだけ。でも、これこそが、子ども時代に養っておきたい運動能力の宝庫なのです。

功哲君▶運動会、晴れるかな。
富代さん▶小学校最後の運動会、おばあちゃんも楽しみにしてるからね! 練習、毎日やってる?
功哲君▶大太鼓を持つ腕がパンパン!! でも最近ちょっと慣れた。懸垂して、筋肉をつけてるから!
富代さん▶ちょっと。家の柱でやらないでよ、懸垂! 外で遊んで来て。ほら鬼ごっこが最高だって。
功哲君▶鬼ごっこ?! 友だちとやってるよ。学校の廊下でやったら注意されるけど。
富代さん▶そりゃ当然だ…。
功哲君▶サッカースクールの大学生の先生と時々、練習前にしっぽ取りをしてる。
富代さん▶ズボンにタオルを入れて取り合う、鬼ごっこみたいなゲームだね。先生たちも本気で相手にしてくれて、単純だけど発散できて勝負もできて最高!! 年下の人への思いやりも生まれるね。
功哲君▶そういえば、家でも鬼に追いかけられるけど。
富代さん▶渡る世間は鬼ばかり? 渡る世間に鬼はなし、のはずだけど。