第8回NIE実践フォーラム事前特集:興南中学校の授業、取り組み紹介

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コラム活用 思考力育む 興南中2年が公開授業

11月1日 県NIE実践フォーラム 県立総合教育センター

 第8回県NIE実践フォーラム(主催・県NIE推進協議会)が11月1日午後1時から沖縄市与儀の県立総合教育センターで開かれる。日本新聞協会指定NIE実践校の興南中学校2年生の国語の公開授業、それを基にした授業研究会、ワークショップがある。今月の月刊NIEは、フォーラム特集として公開する授業の前段の取り組みなどを紹介する。

【前段の授業】

 第8回県NIE実践フォーラムは興南中学校の公開授業を軸に進行する。授業後の研究会で授業の狙いや小学校、高校への応用法などを授業者、指導者、助言者が話し合う。ワークショップは授業の前段となるコラムの読解ワークシートに取り組む。

拡大したコラムに色を付けながら記事の構成を分析する2年生=21日、那覇市古島・興南中学校

 授業は4時間で構成され、公開するのは最後の4時間目。1時間目の授業は21日行われた。
 前泊優斗教諭が大きくコピーしたコラムを2人に1枚配る。ペンで書いたり消したりできる透明な覆いがついたボードにコラムをはさみ、2人で文章を読み解く準備ができた。
 授業を通して出てくるキーワードに「論」と「例」がある。「論」は筆者の主張、「例」は論を立てるための事例や、慣用句などの表現を指している。
 生徒は2人1組になり、透明な覆いの上からコラムの「論」には赤い線を引き、「例」のうち事例を青く囲み、慣用句などの表現に黒い線を引いていく。ボードの裏には磁石がついており、黒板に貼りつけて、ほかのペアが読み解いた結果を並べて見た。

前泊優斗教諭

 この日使ったコラムは本紙10月17日付の大弦小弦で、「煮詰まる」という慣用句の使い方についての世論調査結果から書き出し、再生エネルギー買い取り制度の見直しの議論を、本来の意味通り煮詰めるべきだと結ぶ。
 再生エネルギーを普及させるためにしっかり議論すべきだという部分が「論」に当たり、慣用句の調査が「例」として立論を支えていることを学んだ。
 この後、生徒は自分の「論」を考え、「例」となる新聞記事を探して、コラムを書く。公開授業ではグループで互いのコラムを読みながら、文章の構成や「論」と「例」に一貫性があるかどうかを検討していく。
 授業をする前泊教諭は「生徒は1年生のころから新聞コラムを読んできた。公開授業を自分の考えをしっかり表現できる場にしたい」と抱負を話した。

【公開授業までの流れ】

 今回の公開授業は全4時間の4時間目に当たる。
<単元の学習目標>
 コラムの構成を理解し、効果的に意見を伝えるための工夫を考えて書く。
☆1時間目(今回の特集記事参照)
 全員で同じ新聞コラムをペアで読み、「論」と「例」を読み解く。
☆2時間目
 自分が書くコラムの「論」を考える。「例」に当たる新聞記事を探す。
☆3時間目
 コラムを書く。
☆4時間目(公開授業)
 書いたコラムをグループで発表する。記事と「論」と「例」に一貫性があるか、コラムの構成などについて話し合う。

【日常の活動】

毎日のワークシート■学年越えリレーノート

意見交換や記述 視野広げ

 興南中学校が公開する授業は、日ごろ取り組んでいる二つの活動に下支えされている。

生徒が毎日取り組む「コラム読解ワークシート」。上にコラムを貼りつけ、毎回教師が設問をつくっている

 試験期間などを除いてほぼ毎日、新聞コラムを貼りつけたワークシートが宿題に出される。出題内容は出てくる語句の意味や文章読解といった国語的なものにとどまらず、例えば地域伝統行事の種類などコラムのテーマに合わせて文章に答えがない設問もある。
 450文字で感想や自分の考えを書かせる設問が必ず最後にある。これらの設問を解くことで、記事を読む習慣をつけ、自分の考えを文章にまとめる経験を積んでいる。
 もう一つは、新聞リレーノートだ。1年生から3年生までの縦割りグループをつくり、環境、国際、地域などグループに割り振られたテーマに関する記事を選んで感想や疑問点を一人が書いて貼り、向かいのページにほかのメンバーが付箋紙にコメントを書いて貼る。

グループで回す新聞リレーノート。1人が選んで感想を書いた記事にほかのメンバーが付箋紙でコメントを書く

 記事を探して意見を交換することを通して、社会に目を向けるとともに、他者の意見にも触れることで視野を広げている。
 中学校・高校のNIE実践代表者の石川美穂教諭は「ワークシートは広く物事を知り、読む力と書く力をつけること、新聞リレーはいろいろな視点に気付くことを狙いにしている」と取り組みの意図を話した。
 公開授業は、リレーノートで選んだ記事を題材にしてコラムを書くという、二つの活動の集大成となる。

 

 

 

 

【校長インタビュー】

新聞の話題 分かち合う  我喜屋優校長

 興南の野球部に来て、まずやったのが1分間スピーチ。北海道、東北、沖縄の子は言葉が少なく表現力が乏しかったからだ。

我喜屋優校長

 朝、散歩に行って五感を通して感じたことを指名して話させる。見本は新聞記者で、散歩は取材に行くことだと子どもたちに言っていた。道にごみが落ちているのを見て嫌だなと思ったら、他人のミスをカバーするのは守備のカバーリングに通じるなとか考えるようになる。
 初めのころは1分間しゃべれない。そんなときは練習として、新聞記事を読んで感想を言わせた。記者が書いた話題を借りて自分の感想を言うわけだから、簡単にできる。そのうち自分で話題を見つけてくるようになった。
 新聞の中にはいろいろな先生がいる。過去の人、今の人、そして未来の自分との出会いがある。また、社説を読みなさいと言っている。居ながらにして世の中のことが分かるのだから。
 伝える力を身につけさせるためには、新聞を読むだけではだめで、伝え合うことが必要。新聞にはいろいろな話題があり、それを分かち合ってほしい。
 公開授業は、普段やっていることを見てもらう。取り入れられるところがあれば、広げていってもらえたらいいと思う。

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