[出前記者] 新聞から憲法学ぶ 沖女短大生 人権に焦点

 新聞から日本国憲法に関係する記事を選び出して意見交換する講義が12日、市長田の沖縄女子短期大学であった。児童教育科2年の約100人が憲法の条文と照らし合わせながら記事を選び、グループで意見交換。いじめや体罰、婚外子の相続、原子力発電所再稼働などの記事を人権の視点から読み込んだ。

新聞から憲法にかかわる記事を探し、条文と照らし合わせる学生=那覇市長田・沖縄女子短期大学

 沖縄タイムスNIE事業推進室の具志堅学記者が講師を務めた。学生らは選んだ記事に関係する条文や読んだ感想を書き込んだワークシートを交換して、付箋紙にコメントを書く形で意見を交わした。
 結婚していない男女の間の子(婚外子)の遺産相続分が、結婚している男女の子(嫡出子)の半分とされている民法の規定をめぐる記事について、「法の下の平等(14条)、財産権の保障(29条)に反する。子どもであることに変わりないので相続は同じであるべきだ」という意見に対して「法的には半分でも仕方がないのではないか」というコメントが付けられるなど、意見の違いを確認した。
 米軍基地内の労働組合の50周年式典の記事から「権利は与えられたものではなく、交渉や闘争で制度化されたと初めて知った」という意見もあった。
 具志堅記者は「記事は人々の生活を書いたもの。生活の中に憲法があることを知ってほしい」と結んだ。
 普段から新聞記事を講義で使ってきた憲法の講義を担当する非常勤講師の山内彰氏(県NIE推進協会長)は「新聞は生きた教材で、堅くなりがちな憲法の講義が生き生きと楽しくできた」と講義の手応えを話した。

学生結ぶ記事切り抜き 資格取得や授業に活用 沖国大で「しんぶんカフェ」

 沖縄国際大学内に「沖国しんぶんCAFE」が4月に誕生した。ディベートや資格取得に向けた勉強などに生かそうと学生たちが足を運んでいる。新聞を切り抜き、自らの視点を付箋に書き込んで次に読む人にリレーするなど、独自の新聞活用法を展開している。(與那覇里子)

新聞で社会的課題を読み取り、意見を出し合う学生ら=16日、沖縄国際大学

 同カフェは、那覇市安里のコミュニティーカフェ「origin」で開かれている「しんぶんカフェ」の2号店。大学内の福祉・ボランティア支援室にあり、常時開放されていて、自由に利用できる。テーブルの上に、沖縄タイムス、毎日新聞、福祉新聞の3紙が置かれ、自由に読むことができる。新聞になじみのない学生に身近に感じてもらおうと、同室の職員や学生らが記事を切り抜き、貧困や福祉などのテーマごとの区分けもしている。
 開設のきっかけは、同大3年の吉濱文佳さん(20)が、同室に常駐する経済環境研究所の稲垣暁特別研究員に「社会福祉士になるための勉強方法を知りたい」と相談したこと。稲垣研究員が「社会のニーズや現状を新聞でリアルに知ることで、学びもより深くなる」とアドバイスし、カフェの開設につながった。
 吉濱さんは同室に通い、「後見」「ノーマライゼーション」など、記事で分からない言葉があれば、辞典などで調べて付箋に書き込み、記事に貼り付ける。「教科書を勉強するよりも社会の事情も分かるし、再編集することで、自分の実にもなっている」と効果を感じ始めている。他の人が付箋を貼った箇所を読んで勉強になることもある。
 16日の昼休み。ゼミの授業で企画されているディベート大会の準備のために、約10人の学生たちがカフェに集まった。テーマは「生活保護費の削減」。貧困や高齢者の現状などが書かれた記事を読み込み、付箋に意見を書き込んで新聞に貼り付けた。
 大城翔平さん(20)は、「カフェで新聞を読むことは考えるきっかけになる。読んで自分の視点を持てるようになることが大事」。喜友名朝也さん(21)は、「切り抜かれているので読みやすい。『奨学金』の記事が身近で考えさせられた」と語った。

キリ学、入学前 新聞切り抜き  AO合格者に課題

 沖縄キリスト教学院大学は、来春入学予定のAO(アドミッションズオフィス)試験合格者に対し、週2枚の新聞スクラップを課し、入学前に発表し合う取り組みを始めた。新聞記事を通して社会に目を向けることや、議論主体の大学の学習に慣れてもらうのが狙いだ。15日にあった最初の発表会では、オスプレイ配備や「英語漬け授業」など新聞の切り抜きを通して集めた情報を基に議論を深めた。(安里努)

 大学で中心となって取り組む照屋信治准教授によると、近年の学生の特徴として、「学力の基礎となる活字を読む力の低下」が見られるという。
 以前は課題図書を決めて読ませていたが「日々新しい情報に触れられる新聞の方が課題として適している」とし、来春入学者へ初めて導入を決めた。
 AO試験は一般に、入学試験だけに頼らず小論文や面接などで受験生の能力や目的意識などを評価する制度。通常の受験より、早く合格が決まるため、入学前に課題を出す例は多い。同大学では合格者60人に11~3月までスクラップづくりを課し、入学前に2度の発表会を開くことで、継続して学ぶことを期待する。
 15日の発表会では普天間高校の安座間彩希さん(17)が、オスプレイ配備に反対する大学生が活動する記事を選び、「私たちは基地問題にどう関わるべきか」と提起した。
 参加した学生から「基地自体に反対ではなく運動に参加できない。でも年配の人がゲート前で活動しているのを見ると心が痛い」などの意見もあり、安座間さんは「自分が考えなかった意見が出て刺激があった。大学生は大人と子どもの間の存在。頑張れば自分の意見を伝えられる」と大学生活を見据えていた。
 照屋准教授は「意見を交換して論文にまとめるのが大学。大学時代に新聞を集中して読んで、読み解けるようになってほしい」とアドバイスした。

自身で選んだ新聞スクラップを見せ合う入学予定者たち=西原町・沖縄キリスト教学院大学