[NIE・実践しんぶん活用](11)小禄南小学校・大澤幸司先生 視野を広げて考える 世界とのつながり探そう 地域ごとに分類整理

対象 小学校6年
教科 社会

指導時間 2時間

【ねらい】

新聞を使い世界とのつながりを学んだ授業で、切り取った記事に関連する地域を地図から探す児童=那覇市の小禄南小学校

教科書の単元「日本と世界のつながり」を、新聞を使って発展させます。直近に起きた出来事を調べることで、より「世界」について身近に考えることができるようになると思います。
 地域(大陸)ごとに分類し、どんな点でつながっているのかを考えさせることで、情報を整理する能力を高めます。

【ポイント】

 あらかじめ切り抜いた記事を紹介し、地域や記事の内容を確認することが大事です。作業中は机の間を回り、積極的に助言します。作業の途中で、進度の早い児童の例を紹介すれば、他の児童も支援できます。
 「スポーツ」「文化交流」といったなじみやすい2、3の分野に絞ると探しやすくなるかもしれま せん。時間に余裕があれば、児童の切り抜きを紹介しながら、記事の内容や日本とのつながりについて全体で考えを深めてもいいでしょう。

 

【実践を終えて】

意見交換の後、自分や友達の選んだ記事の内容と、日本との関係について書き込んだワークシート

 国際関係の記事は内容の理解が難しい場合もありますが、児童なりに興味・関心を持って調べていました。「新聞を毎日読むようにします」と日記に書いた児童もいました。

 

 

 

 

 

授業の手順

〈1時間目〉

(1)めあてを確認する

 これまでの学習を振り返る。前もって切り抜きを紹介。作業の手順を例示して記事から日本とのつながりを探すことを意識させる。

(2)記事を探す

 新聞を1人当たり2部配る。20~25分かけて記事を探す。選んだ記事を ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オセアニア、北アメリカ、南アメリカの6地域に分類してスクラップ帳に貼る。地図で日本との位置関係を確認させる。

〈2時間目〉

(1)意見交換

 グループでスクラップ帳を交換し、互いの記事や書き込みを読む。どのような点で日本とつながっているのかを考えさせる。

(2)発表

 自分で選んだ記事と他の児童が選んだ記事をワークシートにまとめる。一言程度の要約と、どんな分野(文化、戦争・紛争、政治、環境など)でつながっているかを書き込み、さらに分かったこと、自分の考えを書き込む。各グループから1人ずつ発表する。

 

 

 

 

 

島袋さんちのNIE(21)読み聞かせ/十五の春

15歳で自立はすごいなぁ

親へのお礼の手紙は感動

息子の島袋敦也君(13)の自立を願う久仁人さん(48)。離島の子どもたちの苦労に思いをはせながらも、会話は違う方向へ…

十五の春

■2012年3月19日付市町村面
 3月10日朝。蒸し暑かった前日とは変わり、島には少しだけひんやりとした風が吹いていた。いつもは子どもたちのにぎやかな声が響く校庭や体育館に、この日は晴れやかな表情で礼服に身を包んだ大人たちの姿があった。

久仁人さん▶敦也、北大東中3年生の卒業式のことが載っているよ。ここ読んでごらん。
敦也君▶お父さん、20日に卒業生12人全員が島を離れて本島に来るとあるよ。すごいなぁ。
久仁人さん▶親への手紙を読み上げ、涙ながらに15年間のお礼を言うって感動だな。
敦也君▶僕にも自立してほしいということでしょ。
久仁人さん▶その通り。島の子たちは親と一緒に生活できる時間が決められている。それと比べれば…
敦也君▶取りあえず、高校まではお願いします。それから先はまだ分かりません(笑)
久仁人さん▶人は期限があることで頑張れるけど、明日までの命だったらどうする?
敦也君▶ひたすら寝る。何も考えないで過ごせるし。お父さんは?
久仁人さん▶みんなでワイワイお酒飲んでるかな。
敦也君▶島の子どもたちの話から脱線しすぎでしょ!

幸地さんちのNIE(20)スクラップ/みんなもらえた「ランドセル賞」

6年全員ランドセル賞だ

大切にされて幸せだね~

おじさんのお下がりのランドセルを使い続けている幸地功哲君(9)。母親の富代さん(41)と「ランドセル賞」について話しました。

みんなもらえた「ランドセル賞」

■2012年3月8日付市町村面
 【宜野湾】市立志真志小学校(多和田文子校長)は6日の全校朝会で、6年生108人全員に、ランドセルを大切に使い続けたとして「ランドセル賞」を贈った。今年創立30年を迎えた同校は、6年生全員が表彰されるのは初めてではないかと話し、喜んでいる。

功哲君▶わぁー! 志真志小の記事がのってるよ。6年生全員「ランドセル賞」
富代さん▶すごい! 読み聞かせの時間に、みんなをほめてあげよう。
功哲君▶志真志小は30周年でしょ。記念の年に全員がもらえたって、校長先生がほめてたんだよ。
富代さん▶おめでたいことが重なったね。卒業しても頑張ってほしい。中学ではもう使えないけどね。毎日手入れをしてきた子がいるんだって。幸せなランドセルだな~。
功哲君▶ぼくのランドセルも幸せだよ。(40年前に)おじさんが使っていたものを、また使っているんだから。今のものより小さいから、大きなノートや教科書は折れ曲がってしまって痛そうだけどね。
富代さん▶「モノ」を大切にしていると将来、良いことに恵まれて、人との出会いにも恵まれると思うよ。

新聞で育む社会参加の力 日本新聞協会・NIE学会 共同研究報告会

 日本新聞協会と日本NIE学会は3月10日、NIEの情報読解力育成効果を検証した共同研究の報告会を横浜市の日本新聞博物館で開いた。2008年度から3年にわたり、国語、社会、総合の各教科で小学校から高校までモデル授業を行い、研究した成果を教員や新聞社向けに報告。情報読解力を、知ることにとどまらず自分なりの意見を持ち、社会に参加する力と位置付け、NIEがその育成に有効であると結論づけた。教科ごとに研究をとりまとめたパネリストの発言と報告書を基に実践例の一部を紹介し、提言をまとめた。

阿部昇氏

国語=2紙比べ違い探し
文章理解・表現に有効

阿部昇氏(秋田大教授)

▼実践例

 【概要】絶滅したとされるニホンオオカミに似た動物が撮影されたことについて、ニホンオオカミである可能性に肯定的なA紙と否定的なB紙を比較して読む。見出し、リード文、本文、写真などに着目し、違いを見つけ、班ごとと全体で意見交流をした。
 【生徒の感想】「情報が何を一番伝えたいかを考え、自分の意見も尊重したい」(中学)「情報を比較することで違う視点が持てる。その上で自分の考えを持つようにしたい」(高校)
 【教師のまとめ】「個人思考の時間を十分取った後、班での交流をしたので、よく話し合いができ、友達の意見に耳を傾けることができた」「(1)言葉や表現の違い(2)事実の取捨選択の違いなど、吟味する視点を提示したことで、何に着目して読むか分かりやすかった」「言葉は文脈によって付加される意味があることを実感させられた」(中学)
 【提言】(2紙を比較して読んだ実践例以外に)同じ出来事を扱った記事、社説、コラムなどを比較し、関連を分析するなどの教材開発を行った。実践の結果、NIEは文章を(1)構造的に把握し(2)メタ的に(対象化して)分析し(3)評価・批判し(4)自分の意見を表現する-という「新しい学力」育成に有効であることが見えてきた。今後は教科の内容とNIEがどう関連するのかという点を解明してNIEカリキュラムをつくること、新聞界とのさらなるコラボレーションも必要だ。

谷田部玲生氏

社会=地図で「現場」確認
単元目標達成の一方法

谷田部玲生氏(桐蔭横浜大教授)

▼実践例

 【概要】同じ新聞を1人1部持ち、いろいろな面から記事を選び、関係する場所を日本や世界の白地図に示し見出しを書き込む。ニュースキャスターになって選んだ記事を説明し、自分の考えも述べる。
 【評価】オタマジャクシが空から降ってきた石川県で次は小魚が降ってきたという同一の記事を授業の前後に読ませ、記述式で読み取りの度合いをはかった。最高評価(基本的な情報以外に降ってきた原因の諸説などの情報も記述)の児童が授業前の45%から53%に増えた。
 【教師のまとめ】「毎時間扱うことで新聞に親しみをもって取り組めた」「生き生きとキャスターになっていた」「その日の記事に左右される」「子どもにとって興味ある内容が少ないので、興味がない子は意欲的になりにくい」「新聞を広げるスペースが十分にない」
 【提言】ほかに中学では1面広告を使って経済の導入にした。広告を使うことで(1)無答率が低く学習意欲を喚起(2)コピー、写真など「非連続テキスト」で情報読解力育成に有効(3)掲示しやすい大きさで使い勝手がよい-という成果があった。社会科の目標は公民的資質の育成。NIEは教育方法の一つであって何でもNIEではない。どの単元でNIEをどう使えば子どもたちが楽しく学べ、単元目標を達成できるかを研究し、現場の先生方に提案していきたい。

阪根健二氏

総合=職場の広告づくり
福祉・防災に応用可能

阪根健二氏(鳴門教育大教授)

▼実践例

 【概要】従来の職場体験学習と関連づけ、受け入れた職場の広告をつくる。職場体験中に仕事の内容、意義などを取材し、職場をPRするキャッチフレーズを15文字以内で考え、イラストを添えて広告にする。
 【作品例】幼稚園で体験した例。キャッチコピーを「『ありがとう』感謝の気持ちを出せる子どもに」とした。幼稚園の先生がその点を中心に置いていたことを生徒が理解して作成した。老人介護施設の例では「笑顔あふれる そしてありがとう」と、利用者に感謝されることが仕事の喜びであることを表現した。
 【教師のまとめ】仕事内容や意義、楽しさなどさまざまな特徴を挙げた上で、本質的なものに絞っていく作業が職場への理解を深めるのに有効。短い言葉で的確に伝えるコピーを考えることで、言葉の感覚や表現力の育成につながる。
 【提言】学校現場には余裕がない。その上、環境、福祉、防災などの要請が持ち込まれている。そこでこれらの要請をNIEでくくり、既存の行事や教育とリンクした実践を行った。職場体験広告づくりのほかに、地域探訪や授業で行う新聞づくり、コンテストと連動したスクラップ活動について質的向上を目指した。NIEでくくり、新聞の読み方や取材で社会との向き合い方を課題設定すれば、内容は福祉、環境、情報、防災など何でもできるということを提言したい。

★フロアから

イベントの情報 先取りして活用

 埼玉県の小学校教諭 正月の新聞にことしのイベント予定などが載る。例えば東京スカイツリーが開業するころにはその記事が増えるので、どの教科で記事を使おうかと先読みできる。震災など教科書にないことを学ぶとき、子どもたちが共通して調べられるのが新聞の教材としての強さだ。

一人一部ずつ興味がアップ

 社会科モデル授業をした教諭 NIEが注目される以前から授業で、記事の切り抜きを使っていたが、子どもたちが新聞に興味を持った印象はない。ところが1人1部を持たせるとかなりの割合で新聞を好きになり、読むようになった。関心なかったけど案外面白いという意見が多くなった。

【紙面掲載は2012年3月17日】

島袋さんちのNIE(19)読み聞かせ/ミドリムシで生活変える

「ミドリムシ」を食べる?

食糧問題が解決するかも 

微生物が食料になるという記事に驚いた島袋久仁人さん(48)、息子の敦也君(13)も食糧問題解決に期待を掛けています。

 

ミドリムシで生活変える

■2012年2月26日経済面
 池や田んぼにすむミドリムシは植物と動物の両方の性質があるめずらしい生き物で、とても小さい。顕微鏡を使うと、ようやくはっきり見える。東京大学でミドリムシの研究をしていた鈴木さんは、この小さな生き物の中に、人の生活に役立つ特長がつまっていることに注目した。

久仁人さん▶デージすごい! 敦也、ミドリムシが食料になるとの記事があるよ。
敦也君▶ミドリムシは知ってるよ。植物と動物の両方の特徴があるんだよ。光合成だってするし。
久仁人さん▶そうそう。記事にもそう書いてある。何か詳しそうだな。
敦也君▶理科の試験に出てくるよ。でもまさか、食料になるとはビックリ。
久仁人さん▶記事の中で「1日小さじ1杯、約1グラムのミドリムシでビタミン補給ができる」とある。味は抹茶。お父さんの好きな味だ。
敦也君▶だよね。抹茶アイス好きだよね。その内ミドリムシアイスがでてくるかもよ(笑)
久仁人さん▶そうしたら、体にもいいし毎日食べるさぁ(笑)
敦也君▶ミドリムシが食料不足の解決に役立つとある。早くそんな日が来るといいな。

幸地さんちのNIE(18)スクラップ/3万年前の花咲いた!

ナデシコはたくましいね

まだ何か凍ってるかな?

花と女子のサッカー日本代表。そのたくましさと美しさに、幸地功哲君(9)と母親の富代さん(41)は心を動かされたようです。

3万年前の花咲いた!

■2012年2月21日付総合面

 シベリアの永久凍土で見つかった約3万年前の植物の実から種を取り出し、花を咲かせることにロシアの研究チームが成功し20日、米科学アカデミー紀要に発表した。絶滅した植物の再生や新たな生物資源としての利用が期待できるという。

富代さん▶見てごらん。3万年も前の花が咲いたんだって~♪
功哲君▶白くてきれい。ナデシコ科だぁ! 学校でナデシコの花を植えたんだよ。なでしこジャパンのナデシコって、この花か~ってね。
富代さん▶へぇー偶然。見た目はか弱そうだけど、実はたくましいんだね。
功哲君▶どうして3万年も芽が出なかったのかな?
富代さん▶凍った場所にたまたま、実があったみたい。
功哲君▶木の実だから残ってたのか。
富代さん▶シベリアの永久凍土といえば、マンモスの頭が見つかった場所だね。愛知万博で展示されてたね。
功哲君▶まだ何か凍ってるかも!
富代さん▶探しに行ってみたい? シベリアはロシアの北の方にあるんだよね。
功哲君▶シベリアに行ってる間に、なでしこのメンバーが沖縄に来ちゃうよ~。

 

[NIE・実践しんぶん活用](10)宜野湾小学校・佐久間洋先生 家族と意見交換をしよう 自分の考えを深める 関心広げる手助けに

対象 小学校5年~
教科 国語・総合学習
指導時間 2時間

【ねらい】

家庭の教育に新聞を活用するファミリーフォーカスの取り組みです。話し合い活動を通して言語活動の能力を高めるのが狙いです。
あらかじめ家庭でスクラップをつくり 、記事を通して意見交換してもらいます。児童と 保護者がそれぞれの考えを聞くことができるので、家庭のコミュニケーションを深める機会にもなります。
児童だけで選ぶとスポーツ記事を切り抜くことが多いですが、保護者が記事を選ぶ作業を手伝うことで、子どもの関心を広げることができます。

【ポイント】

必ず保護者に関わってもらうよう、1時間目で指導します。前もって保護者に通知するのも大事です。家庭で取り組むよう課題を与えてから、授業を行うまで1週間くらいの期間を持ちました。
月に1度くらいのペースなら保護者も取り組みやすいと思います。
グループでの話し合い活動では、全員が発言できるように指導してください。机の間を積極的に回って助言し、議論を促すようにします。深みのある話し合いをしているグループがあれば、その都度、紹介してあげてください。
全体の意見発表では代表を2人にして内容説明と意見・感想の発表を分担させてもいいでしょう。

 

【実践を終えて】

児童からは「親と話すことができてうれしかった」。保護者からは「子の成長が実感できた」「子どもの視点が分かった」などの声が寄せられました。

授業の手順

〈1時間目〉

(1)手順を説明する
保護者と一緒に新聞をめくって記事を選ぶこと、自分の意見、保護者の意見、さらに自分の感想を書くことを説明する。
〈2時間目〉
(1)グループ内で紹介
4~5人グループになって、全員が自分の選んだ記事を紹介し、自分の意見を述べる。
(2)グループで意見交換
どの記事をテーマに話し合い活動をするか選ぶ。その記事に対する感想を述べ合い意見をまとめる。

 

(3)全体で発表

グループの代表が、記事の内容説明と、まとめた意見・感想を発表する。
新聞記事のスクラップ(左)と児童 と保護者がそれぞれの意見を書き込んだワークシート