[現場のひと工夫~実践指定校紹介](2)城北小学校

教科と連動 関心高める

  那覇市立城北小学校(當山しのぶ校長、在籍797人)は本年度から日本新聞協会指定のNIE実践校になり、教科と連動させる試みを続けている。
 実践の中心となる5年生は12日、社会科の工業に関する授業で、新聞から自動車が出てくる記事や広告を探し、グループで大きな紙に貼りだしていった。今まで車に興味がなかった児童も作業や発表を通して、関心を高めた。実践代表者で5年生担任の宮城和人教諭は「5年生は社会に視野を広げる授業が多くなり、新聞が使える。記事を通して、児童同士、教師とのコミュニケーションを取りやすい」と話す。
 5年生4クラスの広い廊下にテーブルとベンチを置き、新聞を広げられる場所を設けた。ベンチに座り、新聞記事を話題にする姿も見られるようになった。
 NIE専用ノートを作り、記事を貼って感想を書く取り組みも、全国紙と地元紙の提供が始まった9月からスタート。辞書を引く習慣づけにつなげている。
 當山校長は従来「根拠を持って発信できる子」を育てることを目指していて、新聞活用を通して実現したいと実践校に応募した。「今は人に伝えることを苦しいと感じている子が多いが、伝える楽しさ、喜びを感じることで自信を持てる」と期待している。

社会の授業で作った新聞切り抜きが廊下の壁に貼られていた=那覇市立城北小学校

第8回NIE実践フォーラム事前特集:興南中学校の授業、取り組み紹介

コラム活用 思考力育む 興南中2年が公開授業

11月1日 県NIE実践フォーラム 県立総合教育センター

 第8回県NIE実践フォーラム(主催・県NIE推進協議会)が11月1日午後1時から沖縄市与儀の県立総合教育センターで開かれる。日本新聞協会指定NIE実践校の興南中学校2年生の国語の公開授業、それを基にした授業研究会、ワークショップがある。今月の月刊NIEは、フォーラム特集として公開する授業の前段の取り組みなどを紹介する。

【前段の授業】

 第8回県NIE実践フォーラムは興南中学校の公開授業を軸に進行する。授業後の研究会で授業の狙いや小学校、高校への応用法などを授業者、指導者、助言者が話し合う。ワークショップは授業の前段となるコラムの読解ワークシートに取り組む。

拡大したコラムに色を付けながら記事の構成を分析する2年生=21日、那覇市古島・興南中学校

 授業は4時間で構成され、公開するのは最後の4時間目。1時間目の授業は21日行われた。
 前泊優斗教諭が大きくコピーしたコラムを2人に1枚配る。ペンで書いたり消したりできる透明な覆いがついたボードにコラムをはさみ、2人で文章を読み解く準備ができた。
 授業を通して出てくるキーワードに「論」と「例」がある。「論」は筆者の主張、「例」は論を立てるための事例や、慣用句などの表現を指している。
 生徒は2人1組になり、透明な覆いの上からコラムの「論」には赤い線を引き、「例」のうち事例を青く囲み、慣用句などの表現に黒い線を引いていく。ボードの裏には磁石がついており、黒板に貼りつけて、ほかのペアが読み解いた結果を並べて見た。

前泊優斗教諭

 この日使ったコラムは本紙10月17日付の大弦小弦で、「煮詰まる」という慣用句の使い方についての世論調査結果から書き出し、再生エネルギー買い取り制度の見直しの議論を、本来の意味通り煮詰めるべきだと結ぶ。
 再生エネルギーを普及させるためにしっかり議論すべきだという部分が「論」に当たり、慣用句の調査が「例」として立論を支えていることを学んだ。
 この後、生徒は自分の「論」を考え、「例」となる新聞記事を探して、コラムを書く。公開授業ではグループで互いのコラムを読みながら、文章の構成や「論」と「例」に一貫性があるかどうかを検討していく。
 授業をする前泊教諭は「生徒は1年生のころから新聞コラムを読んできた。公開授業を自分の考えをしっかり表現できる場にしたい」と抱負を話した。

【公開授業までの流れ】

 今回の公開授業は全4時間の4時間目に当たる。
<単元の学習目標>
 コラムの構成を理解し、効果的に意見を伝えるための工夫を考えて書く。
☆1時間目(今回の特集記事参照)
 全員で同じ新聞コラムをペアで読み、「論」と「例」を読み解く。
☆2時間目
 自分が書くコラムの「論」を考える。「例」に当たる新聞記事を探す。
☆3時間目
 コラムを書く。
☆4時間目(公開授業)
 書いたコラムをグループで発表する。記事と「論」と「例」に一貫性があるか、コラムの構成などについて話し合う。

【日常の活動】

毎日のワークシート■学年越えリレーノート

意見交換や記述 視野広げ

 興南中学校が公開する授業は、日ごろ取り組んでいる二つの活動に下支えされている。

生徒が毎日取り組む「コラム読解ワークシート」。上にコラムを貼りつけ、毎回教師が設問をつくっている

 試験期間などを除いてほぼ毎日、新聞コラムを貼りつけたワークシートが宿題に出される。出題内容は出てくる語句の意味や文章読解といった国語的なものにとどまらず、例えば地域伝統行事の種類などコラムのテーマに合わせて文章に答えがない設問もある。
 450文字で感想や自分の考えを書かせる設問が必ず最後にある。これらの設問を解くことで、記事を読む習慣をつけ、自分の考えを文章にまとめる経験を積んでいる。
 もう一つは、新聞リレーノートだ。1年生から3年生までの縦割りグループをつくり、環境、国際、地域などグループに割り振られたテーマに関する記事を選んで感想や疑問点を一人が書いて貼り、向かいのページにほかのメンバーが付箋紙にコメントを書いて貼る。

グループで回す新聞リレーノート。1人が選んで感想を書いた記事にほかのメンバーが付箋紙でコメントを書く

 記事を探して意見を交換することを通して、社会に目を向けるとともに、他者の意見にも触れることで視野を広げている。
 中学校・高校のNIE実践代表者の石川美穂教諭は「ワークシートは広く物事を知り、読む力と書く力をつけること、新聞リレーはいろいろな視点に気付くことを狙いにしている」と取り組みの意図を話した。
 公開授業は、リレーノートで選んだ記事を題材にしてコラムを書くという、二つの活動の集大成となる。

 

 

 

 

【校長インタビュー】

新聞の話題 分かち合う  我喜屋優校長

 興南の野球部に来て、まずやったのが1分間スピーチ。北海道、東北、沖縄の子は言葉が少なく表現力が乏しかったからだ。

我喜屋優校長

 朝、散歩に行って五感を通して感じたことを指名して話させる。見本は新聞記者で、散歩は取材に行くことだと子どもたちに言っていた。道にごみが落ちているのを見て嫌だなと思ったら、他人のミスをカバーするのは守備のカバーリングに通じるなとか考えるようになる。
 初めのころは1分間しゃべれない。そんなときは練習として、新聞記事を読んで感想を言わせた。記者が書いた話題を借りて自分の感想を言うわけだから、簡単にできる。そのうち自分で話題を見つけてくるようになった。
 新聞の中にはいろいろな先生がいる。過去の人、今の人、そして未来の自分との出会いがある。また、社説を読みなさいと言っている。居ながらにして世の中のことが分かるのだから。
 伝える力を身につけさせるためには、新聞を読むだけではだめで、伝え合うことが必要。新聞にはいろいろな話題があり、それを分かち合ってほしい。
 公開授業は、普段やっていることを見てもらう。取り入れられるところがあれば、広げていってもらえたらいいと思う。

[現場のひと工夫~実践指定校紹介](1)大里南小学校

低学年も読める新聞台

 南城市立大里南小学校(宮城末義校長、在籍815人)の児童玄関を入ると、すぐに新聞の掲示が目に入る。いわば、学校の目抜き通りに新聞がある環境だ。
 そこは図書館の入り口でもある。司書の崎原みさ子さんが選んだ記事が、1週間交代で張り出されている。地元の話題、科学技術、動物など子どもたちの関心を引きそうな記事が並ぶ。
 同じ通りの、元はベンチだった場所に宮城校長が新聞閲覧台を作った。低学年の子が膝をついても読める低さだ。登下校や休み時間に通る子が記事を読んでいると、つられて別の子も足を止める。崎原さんは、図書館の窓ごしに子どもたちの様子をうかがって、反応を楽しんでいる。「まずは子どもの目に入る所に記事を張って親しませたい」と言う。
 本年度から日本新聞協会の実践校指定を受けた。宮城校長は「学校経営の目標の一つが学力向上、特に国語が課題としてある。本や新聞に親しむことから始め、目標の二つめの『ふるさと学習』と結び付けて発信したい」と抱負を話した。
 実践代表者の土屋勢子教諭は「文を読み取り、まとめる力を付けさせ、言葉を豊富に持っている子を育てていきたい」と話した。

低い位置に置かれた新聞閲覧台=南城市立大里南小学校

先生たちも新聞活用法学ぶ NIEアドバイザー、自校で研修会

生命や郷土愛 道徳教材探す 大里中学校

 南城市立大里中学校の校内研修で21日、NIEが取り上げられ、記事を道徳の教材にするワークショップをした。

道徳の授業で使える記事を探して設問を考える教員=21日、南城市立大里中学校

 同校の兼松力教諭(日本新聞協会NIEアドバイザー)が講師。道徳で教える24の内容項目をワークシートに例示し、どの項目の教材になるか選んだ上で生徒への発問を考えた。兼松教諭は記事から答えを探せるものではなく、生徒の考えを引き出せる発問がよいと助言した。
 熊本市で犬猫の殺処分がゼロに近づいているという記事を「生命の尊重」「よりよい社会の実現」で、方言札の記事を「郷土愛」で使う案などが発表された。
 携帯電話に出ないとゲームやメールができなくなるアプリを米国の母親が作った記事を選んだ波照間生子教諭は「作り物的な教科書と比べて新聞記事は新鮮で生徒の食いつきがよさそう」と手応えを話した。

記事読み聞かせ コツと実践紹介 比屋根小学校

 沖縄市立比屋根小学校の教師が22日、学習に新聞を使うNIEの基礎と実践例を学んだ。日本新聞協会NIEアドバイザーの佐久間洋教諭が在籍しており、講師を務めた。

気になった記事を紹介し合う教員=22日、沖縄市立比屋根小学校

 教師と児童の役割分担をして記事の読み聞かせを体験。佐久間教諭は「ただ読み上げるだけでは駄目。言葉に注目したいときは意味を問い掛けたり、狙いを持ってキャッチボールしながらやってほしい」と呼び掛け、授業の導入部分に取り入れるなど具体的な助言もした。
 比屋根小では佐久間教諭が赴任してきた本年度から、6年生が週末の宿題で保護者コメント付きの新聞スクラップに取り組んでいる。担任の仲泊元教諭は「初めは選んだ理由もなかなか書けなかったが、10回ほど続けたころから書く量が増えた。親のコメントを読んで子どもが視野を広げている」と報告した。

11月1日にフォーラム 興南中が公開授業 県NIE推進協総会

 県NIE推進協議会(山内彰会長)は11日、那覇市の沖縄タイムス社で総会を開いた。11月1日に興南中学校の公開授業を中心とするNIE実践フォーラムを開くことなどを決めた。
 加盟新聞社、NIEアドバイザーら12人が出席。NIEの実践を広く知らせるため映像資料を作ってはどうかといった意見があった。
 山内会長は「教育行政とのパイプが強くなり、研修でも取り入れられるようになってきた」と2013年度の活動を振り返り「さらに深まりを持たせるため、新聞社の皆さんには実践に取り組む教師を紙面で応援してほしい」と要望した。

 

記事集め夏休みの宿題に 大里中生、こつ学ぶ

 夏休みの宿題で新聞記事を集めるため、新聞の読み方を学ぶ授業が2日、南城市立大里中学校であった。全ページの見出しを10分間で読み、気になった記事について1分間で説明した。

新聞を広げ、気になった記事を紹介し合う生徒たち=南城市立大里中学校

 社会科の兼松力教諭が2年生に毎年課している宿題は、沖縄に関する記事を1人30枚以上集めること。休み明けに3人ほどのグループをつくり、記事を持ち寄ってテーマを定め、切り抜き新聞を作成する。
 この日の授業は、見出しを読むことで大意をつかむのが狙い。生徒は選んだ記事についてグループ内で1分間、話し続けるという課題に取り組み、達成すると拍手が起こった。
 兼松教諭は「ほかの人が意外な記事を選んでなかった? 新聞は自分の世界を広げる道具になる」と、生徒に語り掛けていた。

沖縄県内のNIE実践校7校に 浜川小など4校新規

 日本新聞協会は4日、教育現場で新聞を活用する本年度のNIE実践指定校568校を発表した。県内の新聞協会指定実践校は浜川(北谷町)、大里南(南城市)、伊野田(石垣市)、城北(那覇市)の4小学校が新規に、昨年度からの継続校と合わせて計7校となった。実践指定校になると、授業などで活用するための新聞の購読料を一定期間、新聞協会と発行新聞社が負担する。
 新聞協会とは別に、沖縄を含む17道府県のNIE推進協議会が独自の指定校制度を設けている。沖縄の推進協議会指定校は10校。新規の新聞協会指定実践校以外の学校は次の通り。
 【新聞協会指定継続校】小禄南小(奨励枠)▽真喜屋小▽興南中学校・高校【沖縄県NIE推進協議会指定実践校】宮良小▽伊平屋小▽コザ小▽比屋根小▽松田小▽沖縄アミークスインターナショナル▽城北中若夏分校▽大里中▽平良中▽泊高校