スクラップコンテスト 学校での活用例

 第4回沖縄県新聞スクラップコンテストを学習計画に位置付けて活用している学校もある。部門と校種別に取り組みを紹介する。

週末の宿題 保護者も参加
ノート・比屋根小学校

 沖縄市立比屋根小学校は6年生が週末の宿題としてスクラップノートに取り組んでいる。自分で選んだ記事の5W1Hに線を引き、要約とともに感想を書く。保護者がコメントを書くのも特徴だ。

比屋根小のノート。5W1Hに線を引き、大事なところにマーカー。保護者も毎回コメントしている

 NIEアドバイザーでもある佐久間洋教諭を中心に学年全体で6月から実施。佐久間教諭は「文章を書く量が増えたこと、いろいろな視点を持てるようになったのが成果」と手応えを感じている。
 児童は保護者の感想を読んだり、ほかの子のノートを読む機会を設けることで同じ記事でも考えることが違ったり、同じだったりすることを体感している。

 

作品のメッセージ 明確に
切り抜き新聞・興南中学校

 興南中学校は2年前のコンテストから学年単位で応募。今年は全生徒が作品を作った。

興南中の作品例。模造紙中央に訴えたいメッセージを書き、テーマに沿った多様な記事と感想が書かれている

 社会科の授業の一環。夏休み前から個人でテーマを決めて記事を集め、2学期に分類する。その際、すべての記事に感想を書くので内容を読み込むことになる。事実を書いているのか、意見なのか。記事の性格を理解して自分の作品に効果的な使い方を考える。
 重視するのは作品を見る人に伝えるメッセージを明確にすることだ。門林良和教諭は「社会の問題を自分の問題に置き換えられる意義が大きい。社会に対するアンテナの感度が高くなる」と授業への波及効果を期待した。

自分の将来 結びつけ読む
感想文・具志川高校

 具志川高校は今年から記事の感想を書く実践を始めた。社会科各分野の「応用」は進路対策と位置付けられるが、推薦入試、センター試験、専門学校などと進路が多様で一律の授業は難しい。週2時間あるうちの1時間は新聞スクラップに取り組み、時事問題を学ぶ機会とした。

具志川高校の作品例。ワークシートに意見がたくさん書き込まれている

 初めは記事の読解が浅く、自分の考えが持てない生徒も見られたが、続けるうちに書く内容が深まってきた。進路指導部の譜久山ゆかり教諭は「例えば知事選の記事でも自分の将来と結びつけて、こうあってほしいと書いていた。自分で記事を選ぶことも感性をくすぐるようだ」と話した。

[現場のひと工夫~実践指定校紹介](2)城北小学校

教科と連動 関心高める

  那覇市立城北小学校(當山しのぶ校長、在籍797人)は本年度から日本新聞協会指定のNIE実践校になり、教科と連動させる試みを続けている。
 実践の中心となる5年生は12日、社会科の工業に関する授業で、新聞から自動車が出てくる記事や広告を探し、グループで大きな紙に貼りだしていった。今まで車に興味がなかった児童も作業や発表を通して、関心を高めた。実践代表者で5年生担任の宮城和人教諭は「5年生は社会に視野を広げる授業が多くなり、新聞が使える。記事を通して、児童同士、教師とのコミュニケーションを取りやすい」と話す。
 5年生4クラスの広い廊下にテーブルとベンチを置き、新聞を広げられる場所を設けた。ベンチに座り、新聞記事を話題にする姿も見られるようになった。
 NIE専用ノートを作り、記事を貼って感想を書く取り組みも、全国紙と地元紙の提供が始まった9月からスタート。辞書を引く習慣づけにつなげている。
 當山校長は従来「根拠を持って発信できる子」を育てることを目指していて、新聞活用を通して実現したいと実践校に応募した。「今は人に伝えることを苦しいと感じている子が多いが、伝える楽しさ、喜びを感じることで自信を持てる」と期待している。

社会の授業で作った新聞切り抜きが廊下の壁に貼られていた=那覇市立城北小学校

[現場のひと工夫~実践指定校紹介](1)大里南小学校

低学年も読める新聞台

 南城市立大里南小学校(宮城末義校長、在籍815人)の児童玄関を入ると、すぐに新聞の掲示が目に入る。いわば、学校の目抜き通りに新聞がある環境だ。
 そこは図書館の入り口でもある。司書の崎原みさ子さんが選んだ記事が、1週間交代で張り出されている。地元の話題、科学技術、動物など子どもたちの関心を引きそうな記事が並ぶ。
 同じ通りの、元はベンチだった場所に宮城校長が新聞閲覧台を作った。低学年の子が膝をついても読める低さだ。登下校や休み時間に通る子が記事を読んでいると、つられて別の子も足を止める。崎原さんは、図書館の窓ごしに子どもたちの様子をうかがって、反応を楽しんでいる。「まずは子どもの目に入る所に記事を張って親しませたい」と言う。
 本年度から日本新聞協会の実践校指定を受けた。宮城校長は「学校経営の目標の一つが学力向上、特に国語が課題としてある。本や新聞に親しむことから始め、目標の二つめの『ふるさと学習』と結び付けて発信したい」と抱負を話した。
 実践代表者の土屋勢子教諭は「文を読み取り、まとめる力を付けさせ、言葉を豊富に持っている子を育てていきたい」と話した。

低い位置に置かれた新聞閲覧台=南城市立大里南小学校

先生たちも新聞活用法学ぶ NIEアドバイザー、自校で研修会

生命や郷土愛 道徳教材探す 大里中学校

 南城市立大里中学校の校内研修で21日、NIEが取り上げられ、記事を道徳の教材にするワークショップをした。

道徳の授業で使える記事を探して設問を考える教員=21日、南城市立大里中学校

 同校の兼松力教諭(日本新聞協会NIEアドバイザー)が講師。道徳で教える24の内容項目をワークシートに例示し、どの項目の教材になるか選んだ上で生徒への発問を考えた。兼松教諭は記事から答えを探せるものではなく、生徒の考えを引き出せる発問がよいと助言した。
 熊本市で犬猫の殺処分がゼロに近づいているという記事を「生命の尊重」「よりよい社会の実現」で、方言札の記事を「郷土愛」で使う案などが発表された。
 携帯電話に出ないとゲームやメールができなくなるアプリを米国の母親が作った記事を選んだ波照間生子教諭は「作り物的な教科書と比べて新聞記事は新鮮で生徒の食いつきがよさそう」と手応えを話した。

記事読み聞かせ コツと実践紹介 比屋根小学校

 沖縄市立比屋根小学校の教師が22日、学習に新聞を使うNIEの基礎と実践例を学んだ。日本新聞協会NIEアドバイザーの佐久間洋教諭が在籍しており、講師を務めた。

気になった記事を紹介し合う教員=22日、沖縄市立比屋根小学校

 教師と児童の役割分担をして記事の読み聞かせを体験。佐久間教諭は「ただ読み上げるだけでは駄目。言葉に注目したいときは意味を問い掛けたり、狙いを持ってキャッチボールしながらやってほしい」と呼び掛け、授業の導入部分に取り入れるなど具体的な助言もした。
 比屋根小では佐久間教諭が赴任してきた本年度から、6年生が週末の宿題で保護者コメント付きの新聞スクラップに取り組んでいる。担任の仲泊元教諭は「初めは選んだ理由もなかなか書けなかったが、10回ほど続けたころから書く量が増えた。親のコメントを読んで子どもが視野を広げている」と報告した。

政府原案と記事読み比べ 集団的自衛権テーマ おきなわNIEセミナー

 教員向け研修会おきなわNIEセミナー(主催・県NIE推進協議会)が18日、沖縄市の県立総合教育センターで開かれた。30人余りの教員が「初心者向け」と「社会科授業づくり」の2講座に分かれて新聞活用を学んだ。

集団的自衛権行使の閣議決定案原文を読みながら意見交換する教員=18日、県立総合教育センター

 社会科の講座は集団的自衛権行使の閣議決定案が題材。NIEアドバイザーの兼松力大里中教諭が新聞に載った案の原文を読んで疑問や不明な点、意見を書き出した後、記事が指摘する論点と付き合わせる手法を紹介し、教員が体験した。
 兼松教諭は「原文を先に読んで考えた後で、さまざまな意見に触れると納得や疑問が(生徒の中に)出てくる。読む順番が逆だと特定の意見に流されてしまう」と時事問題を授業で扱う留意点を述べた。
 初心者向け講座では、ともにNIEアドバイザーの甲斐崇県立総合教育センター研究主事、佐久間洋比屋根小教諭が写真や4こま漫画を使った実践例を説明した。次回のセミナーは10月4日、新聞社によるワークショップなどを行う。

[出前記者]親子で切り抜き新聞 志真志小30人が参加

 志真志小学校PTA主催の親子切り抜き新聞づくりが12日、体育館で開かれた。親子30人余りが記事選びやレイアウトを通してコミュニケーションを深めた。

記事を並べて切り抜き新聞をつくる参加者=宜野湾市立志真志小学校

 沖縄タイムス整理部の具志堅学記者が見出しで記事の大意が分かることなどを説明。「びっくり」「かっこいい」などテーマに合う記事を集めて、2時間かけて親子で1枚の切り抜き新聞を完成させた。作品を並べて、ほかの家族の新聞にコメントをつける鑑賞会もした。
 宮里歩美さん(30)蓮華さん(2年)親子は「集めると自分もうれしくなるから」と「うれしい」をテーマにした。マンゴー農家の笑顔が印象的な記事広告を選んだ蓮華さんは「笑っている写真なのでマンゴーがおいしそうだった」と感想を書き込んだ。
 歩美さんは事業所内保育園の窓口が那覇市内にできた記事を選んだ。「共働きで家にある新聞をじっくり会話しながら読むことはなかった。娘と触れ合ういい機会になった」と笑顔で話した。

[出前記者]新聞活用法探る 児童の表現力向上へ 豊見城・伊良波小

 豊見城市立伊良波小学校は18日、沖縄タイムスの具志堅学記者を招き、NIE出前講座を開いた。新聞を授業に活用する目的で教師25人を対象に見出しや記事の書き方の特徴、利用法を学んだ。

新聞の授業への活用法について学んだNIE出前講座=18日、豊見城市立伊良波小学校

 4人1組に分かれて「喜」「怒」「楽」などのテーマごとに記事を選ぶ作業に挑戦。島尻千賀子教諭らは、読み聞かせや、写真から思いを読み取るといった方法で「新聞が授業に使えるのでは」と手応えを感じた様子だった。
 平良正栄校長が前任校で児童の表現力の高まりを実感したことから校内研修として企画。児童は「5W1H」を心掛けて文章を書くようになったという。
 平良校長は、NIEを南部に広げるきっかけにしたいと意欲。具志堅記者は「新聞が、授業に気軽に使えることを知ってほしい」と話した。