[実践 わたしの活用術](19)コンクールを授業に活用(小学6年・総合的な学習)

友の意見 考えるヒント ペアよりグループで

コンクールを授業に活用

比屋根小学校 佐久間洋先生

対象 小学6年生
教科 総合的な学習
指導時間 1時間

【授業の様子】
 比屋根小学校の6年1組の児童が、新聞記事を貼り付けて自分の感想を書いた「いっしょに読もう!新聞コンクール」の応募用紙を取り出した。4人で向かい合ってグループ活動の開始だ。
 佐久間洋先生が「グループ活動で大事なことは何ですか」と問いかけると、「お客さんにならないこと」と大きな返事が返ってきた。主体的に取り組むことを声に出して確認した。
 1人が記事の説明と感想を述べるとほかの3人が記事に対する意見を言う。記事を提示した児童は一生懸命メモを取っている。
 「いつも言っているようにメモを取るときは文で書くと間に合わないよ。大切な言葉だけでいいんだよ」。佐久間先生の助言が響く。ふだんからスピーチなどでメモを取りながら聞くのを習慣にしているだけあって、メモ帳を取り出して友達が発する言葉を書き留めていく。
 障がいのある人の要望で那覇空港新国際線ターミナルに優先席ができるなど改善があったとの記事について「もっと点字板が増えたらいい」「優しい施設を増やしてほしい」などの意見が出て、記事を選んだ子がその意見を受け止めて文章にしていった。

【授業の手順】
(0)宿題
 コンクール応募用紙に新聞記事を貼り、感想を書くことを宿題にする。
(1)目当て、手順の確認
 「世の中の出来事に関心をもとう」という目当てを確認する。次のグループ活動の手順を確認する。
(2)グループで話し合い
 1人が選んだ記事を紹介して感想を言う。ほかの3人はその記事への感想を言う。記事を提示した児童は友人の意見をメモする。以上を全員分繰り返す。
(3)友人の意見を書く
 応募用紙に友人の意見を要約して書く(150字以内)。
(4)自分の考えを書く
 友人の意見を踏まえて考えたことを書く(300~400字)。

 【ねらいとポイント】

比屋根小学校 佐久間洋先生

■ねらい
 社会の出来事に関心を持つこと、さらに友達と話し合うことで出来事への考えを深めることができます。
■ポイント
 45分でやるには話し合いを中心にし、前後にある自分の考えを書く活動は宿題にします。友達の話を聞くときにメモを取るのが不可欠です。
 ペアよりも多くの意見が出て多角的な深まりが出るので4人グループで意見交換しました。

 

 

【関連記事】

いっしょに読もう!新聞コンクール 読み解き 解決策探る

 「いっしょに読もう!新聞コンクール」は日本新聞協会が募集する全国規模の新聞感想文コンクール。友人や家族の意見を聞き取って書き、それを踏まえた自分の意見を書くのが特徴だ。他者の意見を読み解いたり、文章にまとめたりする過程が「言語活動の充実」を具体化する実践といえる。
 国語的な活動であると同時に社会科の授業にもつながるとの指摘がある。福岡県・飯塚市立小中一貫校頴田(かいた)校の柴田康弘教諭は「社会科では判断の分かれる社会問題等について他者との議論を通じて、その解決策や代替策を探るといった授業が求められている」(日本新聞協会発行『NIEニュース75号』から)として、コンクールの仕組みが社会科の授業に援用できるという。
 過去の応募作を見ると、スポーツ記事では応募者の感想以上に議論が深まることはまれで、授業の際には記事の選択に助言が必要となりそうだ。

「実践わたしの活用術」は毎月最終水曜日の「月刊NIE」のページで連載します。

[出前記者]家族自慢 文章に 真喜屋小 児童が親取材

 名護市立真喜屋小学校(伊礼正二校長)の日曜授業参観で15日、4年生が親にインタビューして文章をまとめる授業があった。「私の家族自慢」がテーマで、家族の結びつきを再確認した。

親子でインタビューした真喜屋小4年生の授業=名護市真喜屋

 沖縄タイムス新聞活用出前授業を利用した。安里努NIE事業推進室記者が伊礼校長に模擬インタビュー、メモの取り方などを伝えた。
 児童18人は参観に来た親に家族一人一人の紹介や家族全体で自慢に思うことを尋ねて付せん紙にメモを取り、次の授業で200字の作文にまとめた。
 比嘉海広(みひろ)君は母親をインタビュー。母はバレーやバスケットに励む娘や息子を挙げて「仲が良くてみんなで大会(試合)の応援に行くのが自慢」とまとめた。
 担任の山城理乃教諭は「ふだん書く作文より温かさが感じられた。保護者の家族を思う温かな気持ちが、子どもたちに伝わったようだ」と感心していた。

[実践 わたしの活用術](18)コラムで言葉を磨く(高校3年・国語演習)

言い換え考え 違い吟味 熟語探し 語彙増やす

コラムで言葉を磨く

興南高校 石川美穂先生

対象 高校3年生
教科 国語演習
指導時間 2時間

【授業の様子】
 興南高校3年生の国語演習の授業。拡大された本紙5月19日付のコラム大弦小弦が黒板に10枚張られている。2人一組で読み、いい表現だと思う部分に青、言い換えた方がいいと思う部分には赤印が付いている。赤と青の評価が分かれている表現がある。
 コラムは沖縄の梅雨がテーマ。屋敷や道路が舗装された今、「地面に染み込まない水」が一気に海に流れるという部分に赤印を付けたペアは「地面に染み込まない」の代案に「地面からあふれた」を挙げた。理由は「あふれた」の方が水が多く感じるという。青印(原文支持)のペアは「あふれたは容器に使う表現」との意見。
 石川美穂教諭は「文章は対比構造になっていることが多い。『染み込まない』が今のことだから対比する部分を探してみよう」と呼び掛けた。前の段落で舗装されない昔は雨が土や石積みの間に「染み込んだ」とあり、原文のままがふさわしいという結論になった。
 主語を表す助詞は「が」がよいか「は」がよいかという議論も出た。
 要旨を100字で、自分の考えを150字で書く定型の宿題を出して授業が終わった。

【授業の手順】
(0)準備
 コラムを拡大コピーし、透明のカバーの間に挟む教具にセットする。
(1)コラムを読む
 2人一組でコラムを読む。ぴったりだと思う表現に青、もっとよい表現があると思う文には赤で印を付ける。
(2)語彙(ごい)を増やす
 コラムに出てくる漢字を使った別の熟語を電子辞書で探させる。挙がった熟語を解説したり、あまり知られていない熟語を紹介したりする。
(3)言葉を吟味する
 (1)で印を付けたコラムを黒板に張る。青、赤それぞれの根拠を挙げさせ、言葉の意味、受けるイメージを共通理解にする。

 【ねらいとポイント】

興南高校 石川美穂先生

■ねらい
 言い換えを考えることは原文の意味を読み取り、ほかの言葉との意味の違いを吟味することになります。生徒は辞書にある意味以外の意味を思い込んでいることがあるので、頻繁に辞書を引いて確かめます。
 また5分の1の分量に要約するには熟語に置き換えることが必要で、語彙(ごい)を増やすことにつながり、同じ言葉を使わないように小論文対策にも役立ちます。
 記事にある言葉と関連する別の言葉を探させることでも語彙を増やします。
■ポイント
 地元紙のコラムは身近なことが書いてあり、分量も適当です。社会問題を書いたものはその問題を理解する方に思考がいってしまうので、言葉に注目する今回は季節の話題を選びました。

「実践わたしの活用術」は毎月最終水曜日の「月刊NIE」のページで連載します。

教師、NIE授業学ぶ 伊平屋小で佐久間さん出前授業

 伊平屋小学校(堀越泉校長)で16日、5年生を対象にした新聞読み聞かせの授業と教師向けのNIE研修会が開かれた。

教師が見学する中、新聞を使った出前授業をする佐久間教諭(右端)=伊平屋小学校

 前年度まで同校に在籍していた佐久間洋比屋根小教諭(NIEアドバイザー)が授業し、その後、授業の狙いなどを新たに赴任した教師らに解説した。
 佐久間教諭は、例えば語彙(ごい)を増やすなら、読み聞かせの途中で意味を児童に問い掛けるなど教師が意図を持って新聞を教材にすることが大事だと説明した。
 堀越校長は「佐久間先生の2年間のNIE活動で子どもの大きな変化を見ることができた。各先生の指導のアイテムの一つにし、まず実践してチャレンジしてください」と期待した。(西藤優三通信員)

[実践 わたしの活用術](17)校内ルールと関連付け(小学5年・朝の学習)

事故の記事 安全指導に 予防の大切さ 考える

校内ルールと関連付け

浜川小学校 神谷久先生

対象 小学6年生
教科 朝の学習
指導時間 15分

【授業の様子】
 毎週金曜日、1時間目の前の15分間、北谷町立浜川小学校では新聞記事を使ったNIEタイムがある。5年1組では神谷久先生がプロジェクターで記事を大きく映し出していた。
 韓国での旅客船沈没の一報、福島県の阿武隈川で小学1年生が小さな子を助けようとして溺れて亡くなった事故、学校に近い飲食店からワニが逃げ出した記事の三つを順番に映し出した。
 「事故には防げる事故と自分の力では防げないものがあります。この三つはどうかな」。子どもたちの声は旅客船事故以外は防げるというものが多かった。「子どもだけで川に行かない」「ワニが逃げないように鍵をかければいい」など理由を挙げていく。
 子どもたちの発言を整理した後、神谷先生は「昨日の『よい子の約束』を覚えていますか。廊下を走らないなどのきまりは事故を防ぐためのものです」と、前日の朝会で話題にした校内のきまりと関連付けた。
 記事を貼り付けたワークシートに感想を書き発表。「ワニは逃げたけど誰も傷つかないで、悪いところ(原因)が分かったのはよかった」という意見もあった。

【授業の手順】
(0)準備
 プレゼンテーションソフトに記事を取り込む。
(1)記事を映す
 記事を一つずつ映す。事故が起こった時刻、場所、状況などを簡単に説明する。質問を投げ掛けたり、注釈を加えて関心を引きつける。
(2)問い掛け
 画面に見出しを映して、それぞれが防げる事故か防げない事故かを問い掛ける。前日の安全指導と結びつけ、きまりが事故防止のためにあることを説明する。
(3)感想を書く
 記事を貼り、空欄を設けたワークシートを配り、感想を書かせる。
(4)発表
 数人に発表させ、それぞれにコメントを付け加える。最後に再度、事故を防ぐ大切さを確認する。

 【ねらいとポイント】

浜川小学校 神谷久先生

■ねらい
 昨年度からNIEタイムに取り組み、教科や指導に使えないかなと記事を読んでいます。事故の記事から連休前の安全指導と結びつけられると考えました。
■ポイント
 記事は実際に起こったことなので子どもたちが身近に感じて反応がよく、材料として使いやすい。45分授業にできるほど意見が出ました。もう一度道徳でも使ってみたい。

「実践わたしの活用術」は毎月最終水曜日の「月刊NIE」のページで連載します。

NIE実践例 教員学ぶ 大里南小で30人研修

 日本新聞協会指定のNIE実践指定校、南城市立大里南小学校(宮城末義校長)で15日、県立教育センターから講師を招いたNIE研修があり、教員約30人が意義と実践例を学んだ。

選んだ記事について意見交換する教員ら=15日、南城市立大里南小学校

 NIEアドバイザーでもある甲斐崇研究主事が講師。好きな写真を選んで吹き出しにせりふを付ける実践で45分かかった経験を話し「写真を選ぶのに時間がかかる。たくさんの情報から選ぶことは実は難易度が高い。興味関心が薄い子には特に視点を持たせる言葉掛けが必要」と呼び掛けた。
 受講した教員からは「難しそうと思っていたが、早く子どもたちとやってみたいと思った」などの声が上がった。

継続活用 表現力増す NIE実践指定校 報告会

 NIE実践指定校の報告会(主催・県NIE推進協議会)が4日、那覇市久茂地のタイムスホールで開かれた。日本新聞協会指定と県推進協指定の計12校が発表、2校が紙面報告した。新聞を授業や朝の活動で継続的に使うことで読解力や意見などの表現力が高まっていることなどが紹介されたほか、教科内容に組み入れた例などが報告された。

知識を吸収し消化 新垣和哉教諭(喜瀬武原小中学校)
 NIEの効果を数字で図るのは難しいが、児童・生徒が変容していくのを体感できる。知識を吸収し、消化し、はき出せるようになる。引っ込み思案な子どもたちが、自分の考えをまとめ発信する機会をつくりたい。
 当校は小学生30人、中学生14人。規模の小ささを生かし、小中合同で取り組んでいるのが特徴だ。関連性のある記事を選ぶ作業をさせると、たとえば小学生は水族館の入場者数と釣りの記事を結びつけることもある。その発想が面白い。逆に中学生のやり方や考え方を見て小学生が学ぶことも多い。
 取り組み内容の掲示は、事務員や図書館司書が大いに動いてくれた。みんなを巻き込むことで、学校全体のNIE理解が深まる。

 

続けるうちに変化 當銘直美教諭(真喜屋小学校)

 3~5年生を中心に、新聞を活用している。3年生では「私が○○と思った写真」をテーマに、新聞から写真を選んでもらう授業をした。最初は「すごいと思ったもの」ばかりだったが、続けるうちに「心配だと思った写真」としてヤンバルクイナの事故記事を切り取ってきたり、「危ないと思ったもの」としてオスプレイが民家上空を飛行しているものを選んだりと、視点が変わってきた。
 1こまずつ切り離した4こま漫画を基に、意見を出し合う授業にも取り組んだ。子どもから、新聞でこんなに面白いことができると思わなかったとの声が出た。
 新聞を身近に感じる児童が増えてきたが、NIEを日常化するため活用法の研究と具体化が不可欠と感じている。

 

学びと社会つながる 宮城良子教諭(右)高良真弓教諭(陽明高校)
 新聞記事を活用することで、教科書で学んでいる単元と、社会とのつながりに気付いてもらうことができた。世界、沖縄の政治や経済を身近に感じ、自分なりの意見を持つこともできた。
 政治経済の授業では、単元ごとに関連する記事を取り入れている。新聞から質問を出したプリントを作成し、意見も書いてもらう。定期試験でも、必ず新聞から出題。切り抜いた記事を基に、生徒それぞれが選ぶ「十大ニュース」も発表してもらった。
 保健体育の授業でも、健康や環境などの分野で興味のある記事を選んでもらった。グループ内で発表し、友人同士で情報を教え合っている。今後は情報が偏らないよう、さまざまな記事を提供していきたい。

意見交換が活発化 石川美穂教諭(興南中学校)
 全学年の国語で、「新聞リレー」に取り組んだ。気になる記事とともになぜその記事を選んだかや、気付いてほしい点を書き、次の生徒がそれに答えていくというもの。生徒間の意見交換が活発になり、想像以上の効果があった。
 毎日の宿題として、四季や伝統行事などへの理解を深める、コラムを使ったワークシートも取り入れた。
 東京五輪の開催が決まった時には、各社が出した号外を読み比べ。見出しの違いを見ながら、読み手に伝わる印象の違いを考えた。
 NIEを始めて、生徒たちの国語力は伸びてきている。一定の成果があるが、今後はさらに効果を見据えた取り組みが必要。NIEを広げる上でも、欠かせないことだと思う。

 

きらりアイデア(ほかの実践校の事例)

小禄南小学校…児童の作品を保管し、異動してきた教師と共有。
伊野田小学校…地域の人も利用できる新聞コーナーを設置。
浜川小学校…全学年で週1回朝のNIEタイム。読み聞かせなど。
中原小学校…3年生が同じ部首の漢字探し。教科書では文字が少ない。
越来小学校…毎週末親子でスクラップ。会話弾む(4年生)。
沖縄アミークスインターナショナル…4こま漫画を壁一面に掲示。まず関心を高める。
宮良小学校…見出しだけ切り抜き。「短くても伝わる」(5年)。
コザ小学校…委員会活動を取材し、伝えたいことを見出しに(5年)。
伊平屋小学校…1年生も授業参観日に親子で切り抜き新聞作り。
沖縄工業高校…琉球・沖縄史を記事で学ぶ。資料集には記述少ない。