多角活用 読解力養う 県NIE実践報告会

 2012年度県NIE実践報告会(主催・県NIE推進協議会)が6日、那覇市の琉球新報社で開かれ、日本新聞協会指定実践校5校、県指定校4校が各学校の新聞活用方法を発表した。新聞記事に親しみながら読解力や文章の構成力を身につけたり、気に入った記事の内容を発表することで表現力を養うなどの効果が報告された。主な発表内容を報告する。

意見を書き情報理解 仲地エリ子教諭・中原小

 本年度は特に11月の県NIE実践フォーラムの開催に向けて、児童の情報活用や判断力、表現力を身につけることに力を置いた。
 年間計画として、新聞スクラップを活用した朝の1分間スピーチ、記事に意見を書き込む新聞ツイッターをはじめ、空き教室に新聞コーナーを設け、新聞に親しむことから始めた。
 保護者向けのワークショップで新聞スクラップ教室を行い、家庭での関心を高めるようにした。その結果、児童は新聞を身近に感じるようになり、必要な記事を自分で探し、資料を読み取って理解する力が付き始めた。
 読解力など児童の間に個人差があるが、今後も取り組みを深めることで可能性を伸ばしていきたい。

朝のスピーチで自信 古波津聡教諭・コザ小

 3年生以上の児童を対象に、全職員で新聞を活用した実践に取り組んだ。教科を限定せず、新聞の良さを十分生かして授業で活用することを全職員で確認した。
 NIEを進めるキーワードは「無理なく、継続できる取り組みを」。NIEを意識せず、自然な形で取り組むことを強調した。
 朝の1分間スピーチで気に入った記事を紹介するなどの活動に取り入れた。その結果、児童から「長い文章が読めるようになった」「みんなの前で発表するのは緊張したが頑張れた」などの意見があがった。
 新聞が社会の窓口になり児童の興味や関心が多様になったほか、キャリア教育の一環として学習を進めることができた。

意欲高まる投稿掲載 上江洲ジョアナかおる教諭・沖縄アミークス

 年間を通して新聞スクラップを行った。はさみやのり、スクラップブックなどの3点セットを準備。児童らは慣れると、自分の気に入った記事を選んで内容を要約するようになった。
 作文を新聞に投稿し、掲載されると児童らのモチベーションは高くなる。掲載された作文をクラスのみんなで内容を共有し「このように書けばいい」などの意見をあげることで文章力のレベルアップにつなげた。
 新聞記事を項目ごとに分けて壁に張り付けた。昨年は「復帰40年」を紹介するために新聞を活用。「昭和の時代」を新聞記事から探して当時のことを考えた。新聞も張りっぱなしではなく、頻繁に更新することで、児童らの興味を引きつけることができた。

記事書写し文章上達 子安緑教諭・小禄南小

 毎週月曜日朝の15分間に「NIEタイム」を設け、新聞を使った言語活動の充実に取り組んだ。毎週各学級分提供してもらった「ワラビー」紙面を活用することも多かった。
 例えば2年生の活動では3色ペンを使い、記事の「いつ」「どこで」「だれが」などの部分を色分けして理解する作業を行った。5年生では、毎週指定された記事の要点を100~150字の範囲で書写した。この活動を通して児童は簡潔な文の書き方や語彙(ごい)を身につけることができた。
 NIEの成果として、これまで記事の感想を書くことが多かった児童が見出しを付けるなど、内容をよく読み取るようになった。続けるうちに疑問や意見を書く児童が増えた。

動物テーマに親しむ 福地正雄教諭・越来小

 本年度は全学年でNIE実施計画を作り、新聞を活用した授業に取り組んだ。校内研修での実践活動はもちろん、NIEアドバイザーや現場記者との連携などを目標に掲げた。
 1年生が新聞記事からカタカナ語を探した。2年生は国語の単元「どうぶつ園のじゅうい」をテーマに、動物について書かれた記事を探しながら新聞に親しんだ。6年生は「復帰40年」をテーマに、特集記事から当時の様子を読み取り、今後の沖縄について考えをまとめた。
 家庭学習で、新聞を切り抜いて感想を書き、時事問題に関心を持つ児童が増えてきた。日常的に授業に取り組むためには、学校で新聞の部数を確保することも必要だと感じた。

 

17人全員 新聞載った! 伊平屋小6年 体験や意見投稿

 新聞を取り入れた授業に取り組んでいる伊平屋小学校6年生が投稿した17人全員の意見や主張が、1月までに沖縄タイムスなどに掲載された。

新聞投稿で、全員の意見などが掲載された伊平屋小学校6年生17人=同校

 昨年4月からNIEアドバイザーで同小6年生担任の佐久間洋教諭のもと、自由題材で作文用紙1枚程度に自分の意見などを書き、投稿してきた。児童らは自ら体験したことや、新聞などを通して知った世の中の事象に対する考えや意見を書いた。
 大見謝美夢さんは「新聞を使った授業のおかげで文章がたくさん書けるようになった。作文が新聞に載った時は、とてもうれしかった」と笑顔で話した。
 佐久間教諭は、新聞教育で世の中に対する関心が高まり、新聞を読む量が増加したことなどの効果を指摘。「男子と女子が自分の考えで意見するようになり、よく話をするようになった」と継続の大切さを伝えた。
 6年生は、自宅でも親子のコミュニケーションを図り、双方の考えを知る機会をつくることを目的に、気になった新聞記事を取り上げ、意見や考えなど思ったことをノートに書くなど、さまざまな場所で新聞を取り入れた学習を行っている。(國吉由美通信員)

小禄南小に学校賞 いっしょに読もう!新聞コンクール

 家族や友人らと新聞記事を読み、感想や意見などをまとめた作文を募集した「第3回いっしょに読もう! 新聞コンクール」で、県内から那覇市立小禄南小(山城銀子校長)が学校賞に選ばれた。5年生を中心に99点を応募。学校ぐるみの取り組みが評価された。我喜屋健(つよし)教頭ら関係者は「短い文(記事)の内容を読み取る力や、文章で表現する力が付いてきた」と新聞を活用した学習成果に手応えを感じている。
 同コンクールは、日本新聞協会が11月のNIE月間に合わせて実施。国外を含め2万5864点の応募があった。学校賞は小中高合わせ、小禄南小を含む10校が受賞した。
 小禄南小は朝の学習時間にNIEタイムを取り入れるなど新聞を積極的に活用してきた。
 5年生の前里周子(ちかこ)さん(11)は、県内の小中学生のダンスグループが世界大会で優勝した記事を取り上げた。「私と年がはなれていない子が頑張っていてすごいと思った。(記事について)お母さんとお姉ちゃんと話し合って楽しかった」と笑顔。本紙の子ども新聞ワラビーを毎週楽しみにしているという。

 このほか県NIE推進協議会の会長賞・奨励賞に6人が選ばれた。
 【県NIE推進協議会表彰】(敬称略)
 ▽会長賞 照屋瑠(小禄南小5年)知花由佳(興南中3年)李英帆(名護高3年)
 ▽奨励賞 赤嶺佳名子(小禄南小5年)伊野波葵(興南中3年)西平愛(名護高3年)

スクラップコンで学校賞に選ばれた小禄南小。5年生は86点を応募した=那覇市小禄

中原小学校公開授業の指導案

 11月3日に行われたうるま市立中原小学校のNIE公開授業の指導案(PDFファイル)を掲載します。
・1年生 国語「あそびにいこうよ『あきのあそび』」
・2年生 国語「かたかなの広場(2)」
・3年生 総合的な学習「新聞からうるま市をみつけよう」
・4年生 特別活動「新聞の見出しですごろくづくり」
・5年生 国語「季節の言葉 秋の空」
・5年生 社会「くらしを支える情報」
・6年生 総合的な学習「平和について考えよう」
・特別支援 国語「4コマ漫画のお話について考えよう」
・特別支援 国語「絵を見てお話や吹き出しを考えよう」

見出しすごろく遊んだ学んだ  「明るいニュースは『進む』」 中原小でNIE実践フォーラム

新聞の見出しを切り貼りしたすごろくで時事を学ぶ中原小4年1組の児童=3日、うるま市中原小学校

 新聞を教育に活用する方法を紹介する第6回県NIE実践フォーラム(主催・県NIE推進協議会)が3日、うるま市立中原小学校(安里禮子校長)で開かれた。教師や保護者ら多数が参加し、学校現場での取り組みなどを見学した。
 特別支援学級を含めた各学年全クラスに分かれて行われた公開授業では、紙面からカタカナ語を見つけたり、地域のニュースを探すなど、児童らは新聞を教材に使って生き生きと学習に取り組んだ。
 分科会ではNIEアドバイザーの兼松力教諭(大里中)、甲斐崇教諭(浜川小)、佐久間洋教諭(伊平屋小)を講師に、教師や保護者らが新聞の持つ多様性などを学んだ。
 4年生は公開授業で、新聞の見出しを使ったすごろく作りに挑戦した。3日の紙面から「沖尚ナイン堂々凱旋」「オスプレイ飛行」などの記事を選んで紙に貼り、「明るいニュースは『進む』」「暗いニュースは『1回休み』」などのルールを決めながら、手作りのすごろくを完成させた。
 4年1組のクラスでは、「このニュースの方が大きい」「なるべく明るい話題をたくさん使いたいな」などの意見を出し合いながら和気あいあいと作業を進めた。仲松凜君(9)は早速すごろくゲームをした後「グループで話し合って、いい見出しを選ぶことができたのでよかった」と満足そうな表情だった。
 兼松教諭は分科会で、保護者に向けて新聞記事のスクラップの方法を指導。「家族それぞれが気に入った記事を探し、話し合うことでコミュニケーションが広がっていく」と効果を説明した。
 県NIE推進協議会の山内彰会長は「(NIEの)意義を共感できてうれしい。子どもたちのバイタリティーを引き出す一つの方法として、NIEに取り組んでもらえたら。絶対に自信につながる」と話していた。

新聞づくり 活発議論 五輪記事を再構成 越来小学校 

 沖縄市立越来小学校(久場明子校長)で16日、新聞記事を切り貼りして再構成する切り抜き新聞づくりの授業があった。NIEアドバイザーの甲斐崇浜川小教諭が招かれ、5年生に指導した。3人グループで1作品を作成する形式。甲斐教諭は「こうすればもっと(テーマが)伝わると意見を言い合って『もめる』ことが大事」と新聞づくりを通して議論する大切さを説いた。  

切り抜き新聞づくりの授業で甲斐崇教諭(右から2人目)の助言を聞く越来小の児童たち=沖縄市越来

 ロンドン五輪の記事を集め、グループごとに「感動」「喜び」などキーワードを決めて記事を配置したり、見出しを付けたりした。「内村選手が1枚もないのはおかしいよ」などと記事・写真の選択や配置で活発な意見が飛び交った。
 越来小の福地正雄教諭は「レイアウトについて話し合っている姿に驚いた」と、身近に感じた記事を再構成する取り組みが活発な意見を引き出す様子に感心した。
 「歓喜の瞬間」の見出しで喜ぶ写真などを早々と配置した小浜俊君と親川裕也君は「難しいと思ったけど、やってみたら簡単だった」と得意げに話していた。

子が興味持ちそうな記事で 親子スクラップ 幸地さん伝授

親子に新聞スクラップのコツを助言する幸地富代さん(右から2人目)=うるま市立中原小学校

 新聞スクラップに親子で取り組んでもらおうと13日、うるま市立中原小学校で出前講座が開かれた。本紙の子ども新聞ワラビーの連載「幸地さんちのNIE」を執筆している幸地富代さん(42)=宜野湾市=が「子どもが興味を持ちそうな記事を紹介してあげて、楽しみながら取り組んで」と保護者にアドバイスした。
 幸地さんと息子の功哲君(10)は毎日、それぞれが選んだ記事を貼り付けて、スクラップノートを作成。息子が選んだ部分に幸地さんがコメントを書き込むなど交換日記のようなやりとりを続けている。
 幸地さんは「スポーツや動物に始まり、今のテーマは『環境』。子どもの興味の幅がどんどん広がっている」と話した。数十冊にも上るスクラップノートを夫と息子と一緒に読み返すこともあり、家族のコミュニケーションを深める道具として活用していることも紹介した。
 3年生の息子を持つ銘苅鈴子さんは「子どもに読みなさいという前に、こちらが見出しを読んであげたり、記事を読み聞かせたりすればいいのかな。いいきっかけをもらった」と笑顔で話した。
 中原小は11月3日、NIEフォーラムを開き、新聞を使った公開授業やワークショップを行う。