各校の新聞活用例を発表 NIE実践で指定校が報告会

 2012年度県NIE実践報告会(主催・県NIE推進協議会)が6日、琉球新報社で開かれ、日本新聞協会指定実践校5校、県指定校4校が各学校での新聞の活用事例を発表した。
 各学校とも壁に新聞切り抜きを項目別に張り付けたり、新聞スクラップに読後の感想を書き込んだりするなど、授業で新聞に親しむためのアイデアを紹介。
 コザ小学校の古波津聡教諭は朝の1分間スピーチで気に入った記事を紹介したり、記事について生徒が自由に意見を書き込む「新聞ツイッター」などの事例をあげ「無理なく継続できる取り組みから始めた結果、スクラップなど盛りだくさんの実践に広げることができた」と強調した。
 県NIE推進協議会の山内彰会長は「多くの学校の取り組みをみんなで共有できればいい。今後も文字文化の良さを活動に取り入れたい」と話した。

 新聞協会指定校の発表内容はこちらの記事で。(別ウインドウで開きたい場合はこちら

 

[実践 わたしの活用術](5)記事・映像から被災地を考える(小学4年・道徳)

支え合いの心引き出す 「助けたい」発言次々

記事・映像から被災地を考える

浜川小学校 安里真一先生

対象 小学4年生
教科 道徳
指導時間 1時間

【授業の様子】
 東日本大震災を通じて周りの人を大切にすることを学ぼうと安里真一先生は、3日付本紙子ども新聞ワラビーの記事を取り上げた。
  冒頭、テレビ画面に映し出されたのは2年前の東日本大震災の様子だった。地面が揺れ動き、津波が街をのみ込む映像に教室は静まり返った。「うわー…」「あーっ」。子どもたちが悲しげな声を漏らす。
 福島で子どもの支援にあたる女性2人のインタビューを読み上げ「子どもを助ける理由は何だろう」「見習いたいのはどんなところ?」と問いかける。
 「また死なせたくないから」「大切だから」「未来で活躍してほしいから」「進んで人を助ける」「だれかのために一生懸命」。家を失い、原発事故の影響に苦しむ子どもたちを助ける2人の気持ちを思いやる声が上がった。
 「まだ、こんなに苦しんでいる人(子ども)がいるんだと分かった」「募金とかやったけど、まだ足りないんだな」「できることは、何でもやってあげたい」。授業を終えた子どもたちが、次々と感想を口にする。被災地の人々の気持ちに寄り添うこともできたようだ。

【授業の手順】
(1)大震災の写真・映像を見せる
 最初は地震や津波の情報を出さず、2人の女性の写真を見せる。子どもたちの「何だろう」という気持ちを引き出す。東日本大震災の写真や映像を見せて、現地の苦しさを思い出してもらう。
(2)記事を読み上げる
 記事を読み上げる。大事だと思うところに、蛍光ペンなどで印を付けさせる。
(3)内容を読み解く
 「2人が悩んでいること、不安に思っていること」「子どもたちのために頑張っていること」を考えさせた上で発言させる。
(4)思いやりに気づく
 2人が被災地で子どもを助けている理由、見習いたい点を発言させる。

 

【ねらいとポイント】

浜川小学校 安里真一先生

■ねらい
 思いやりが欠けていたため児童の間でトラブルが起こることがたまにあります。そこで「他人のために何かをする」という気持ちを考え、人が支え合う大切さを伝えたいと考えました。
 学校生活は、部活のコーチや学習ボランティアなど多くの大人に支えられています。大人が子どものために何をしているか、事例を示すと分かりやすいと思いました。
 被災地で子どもを支援している2人の気持ちを読み解きながら、児童から思いやりの気持ちを引き出そうと取り組みました。
■ポイント
 大人の活動を読み取って、自分にあてはめることができるか。45分間の短い時間で、ボランティアの気持ちに迫れるかが大切です。子どもたちに興味を持たせ、子どもの心を引き出すような発問をするように心がけました。

「実践わたしの活用術」は毎月最終水曜日の「月刊NIE」のページで連載します。

17人全員 新聞載った! 伊平屋小6年 体験や意見投稿

 新聞を取り入れた授業に取り組んでいる伊平屋小学校6年生が投稿した17人全員の意見や主張が、1月までに沖縄タイムスなどに掲載された。

新聞投稿で、全員の意見などが掲載された伊平屋小学校6年生17人=同校

 昨年4月からNIEアドバイザーで同小6年生担任の佐久間洋教諭のもと、自由題材で作文用紙1枚程度に自分の意見などを書き、投稿してきた。児童らは自ら体験したことや、新聞などを通して知った世の中の事象に対する考えや意見を書いた。
 大見謝美夢さんは「新聞を使った授業のおかげで文章がたくさん書けるようになった。作文が新聞に載った時は、とてもうれしかった」と笑顔で話した。
 佐久間教諭は、新聞教育で世の中に対する関心が高まり、新聞を読む量が増加したことなどの効果を指摘。「男子と女子が自分の考えで意見するようになり、よく話をするようになった」と継続の大切さを伝えた。
 6年生は、自宅でも親子のコミュニケーションを図り、双方の考えを知る機会をつくることを目的に、気になった新聞記事を取り上げ、意見や考えなど思ったことをノートに書くなど、さまざまな場所で新聞を取り入れた学習を行っている。(國吉由美通信員)

[実践 わたしの活用術](4)記事の読み解き 写真から(小学6年・社会)

遊び場から政治に導く 地元の戦後復興たどる

記事の読み解き 写真から

コザ小学校 神山英先生

対象 小学6年生
教科 社会
指導時間 1時間

【授業の様子】
 「英語の看板が多い」「車が右側」。6年2組の子どもたちが、配られた写真を読み取っていた。「ここはどこ?」。神山英(すぐる)先生が問いかける。「アメリカ。違うな…」「あっ、沖縄」「復帰前みたい」。写真に映し出された情報を分析していく。
  ある子が英語の看板の下にあった岩に気付いた。「この石、今もある!」「あ、そうだ。あるよこれ」「この写真は八重島?」「そうなの?」。教室が沸いた。子どもの関心が一気に高まっていく。
 政治と暮らしのかかわりを学ぶ授業。子どもたちが遊び場にしている八重島公園をテーマに据え、身近なところから関心を引き出すねらいだ。
 次に配られたのが1974年の「基地の落とし子 八重島を訪ねる」という本紙のルポ。廃れた歓楽街の様子と再開発に期待する住民の声を紹介している。
 「なんでアメリカ人がいっぱいいるの?」「戦争で負けて占領されたから」「記事に載ってた人は何を期待しているのかな?」「新しい街づくり!」。教員と子どもとの活発なやりとりが続いた。
 神山先生は「沖縄市は基地の街。それだけに政治の役割を戦後の復興とつなげて考えてもらいたい」と授業の意図を説明した。

【授業の手順】
(1)目当てを確認する
 「写真や新聞記事から○○○の当時の様子や住民の願いを調べよう」という目当てを確認。地名は伏せておく。
(2)写真を読み取る
 史料写真を一人一人に配布。4、5人で話し合ってもらいながら写真から当時の様子を考えさせる。グループごとに黒板に書き出させる。
(3)記事を読む
 新聞記事を配る。見出しを読み上げ、どんな記事か想像させる。記事を自由に読んでもらい、気になるところに印を付けさせる。末尾の住民の声を記した部分を読み上げ、住民の願いを知る。
(4)学校周辺の写真を見せる
 過去の学校周辺の航空写真を見せ、学校に隣接した農業試験場の場所に現在何があるかを考えさせる。

 

【ねらいとポイント】

コザ小学校 神山英先生

■ねらい
 子どもたちが遊び場にしている八重島公園をテーマにすることで「政治と暮らし」という単元への関心を持たせようと工夫しました。
 直前に終えた日本の戦後復興を学ぶ単元とのつながりを持たせました。戦後の地域の歩みを通じて政治の役割を考えてもらいます。次回の授業で、八重島公園や沖縄市民会館に触れます。
■ポイント
 記事を読ませる前に史料写真を見せて想像をふくらませてもらいました。記事が長いルポ形式で文字も小さかったため、子どもには難しいと思ったのですが、それなりに内容を読み取っていました。
 記事に登場する住民の談話は単元の中心部分だったので、抜粋・拡大して配布すれば良かったと思います。新聞記事の提供は、新聞社に協力してもらいました。

過去記事探せます
 1997年以降の沖縄タイムスの記事はデータベース(有料)で検索、プリントできます。説明のページはこちら
 96年以前の記事は、読者センターに問い合わせフォームからご相談ください。

「実践わたしの活用術」は毎月最終水曜日の「月刊NIE」のページで連載します。

教材づくりワークショップ 理論編と実例

 新聞紙面から教材をつくる教師向けのワークショップが1月19日、琉球新報社で開かれました。講師は日本新聞協会公認NIEアドバイザーの兼松力先生(大里中学校)。ワークショップの様子、参加者がつくった教材の実例を報告します。

新聞から教材をつくる教師たち

 
【自己紹介を兼ねたワークショップ】
1.同じ日の新聞を各自1部ずつ持ち、1面から社会面まで見出しだけを5分ほどで読む。
2.すべての記事から一番気になった記事を読み、グループの中で記事を紹介し、なぜ気になったのかをそれぞれ発表する。

【理論編(要約)】
1.進化するNIE
・新聞を授業に使うことは昔から行われてきた。
・かつては、例えば琉球史を教えるために関連する記事を印刷して配るというような「内容論」。
・新聞そのものは教材ではないので、授業の時期に使いたい記事がなかったり、教材にするのに「職人技」が必要。
・NIEとして注目されているのは、新聞をツール(道具)として使う「方法論」としての新聞活用。
・言語活動の充実が掲げられた。読解力・思考力・活用力・コミュニケーション能力を子どもたちに付けさせるツールとして新聞は使える。

2.紙面から教材をつくる
・素材としては記事(本文、見出し、写真など)、広告、投稿、4こま漫画などがある。
・この記事を使うとこんな思考場面が持てるぞ、こんな発問をしようと考えると教材化しやすい。
・例えば、さきほどのワークショップを授業でやると、記事を理解する「読解力」、なぜ気になるかを考える「思考力」、相手に伝わるように話す「コミュニケーション力」がつく。

3.教材づくりの2つの道筋
・○○を教えたいので、紙面から素材を探す
 長所…指導内容が具体化されているので、(素材があれば)見つけやすく、必要に迫られていることが多いので教材化しやすい。
 短所…必要な素材が見つかるとは限らない。普段の蓄積が必要。
・教材になりそうな素材を見つけて教材化。この記事で○○が教えられそう。
 長所…指導内容が限定されていないので、発想・アイデア次第で多くの教材が見つかる。蓄積していくことで様々な場面に対応できる。
 短所…センスやコツが必要。教師がアンテナを巡らせ、多様な発想が必要となる。ただし、これを磨くことで実践力の研鑽になる。

4.NIE教材の典型例
記事をそのものを読み物教材として使う
 資料として使う典型的なパターン。必要な記事を印刷して配布する。著作権法上も授業での印刷、配布は認められている。主に授業の導入、資料として配布される。
 発達段階によっては語句や表現が難しい場合もある。書かれている内容について理解、思考してほしくてもそこまでたどりつくのに時間がかかったりする。中学高校では思考や議論の前提となる資料として活用。「記事にあるように、私はこの意見に賛成。なぜなら….」と意見を主張するときの根拠に使ったりする。また複数の資料を資料を配布して、生徒に取捨選択させることも。
 発展型として、二つの記事を比較して、主張を読み比べたり、事実を深く認識できる。
 
記事をワークシートに添付して使う
 要旨や自分の意見を記入する欄を準備したワークシートに記事を添付する。ワークシート内に課題や発問を付けられるので独立した教材として利用しやすい。また、児童生徒が好みの記事を添付することで多様な学習場面に対応でき、学習課題として与えることもできる。
 また記事について友人や家族の意見(ファミリーフォーカスと呼ぶ)を記載させることで、道徳や学活の教材に利用できる。
 
記事を加工して教材にする
(1)一部の文字を隠して使う
 大見出し、小見出しを隠して、記事の内容から適切な見出しを考えさせる。要旨をまとめる国語力の育成、言葉使いのセンスを磨く。できた見出しを鑑賞しあうことでコミュニケーション能力も培われる。記事中のキーワードを隠して、内容からどんな言葉が隠れているか考えることもある。
(2)記事を段落ごとに切り分けて使う
 接続詞や文脈を手がかりに、段落ごとにバラバラにした記事を並べかえたり、段落ごとの関連性を整理して、文の構成を確認できる。国語の深い読解に使う。ただし一般記事は(結論が先にくる)独特な構成をしていることが多いので、コラムや社説が使いやすい。

紙面そのものを使う 特定の記事ではなく、一日の紙面丸ごと使う。
(1)新聞に慣れさせるために、その日の紙面のお気に入りの記事を発表させたり、漢字やカタカナ語探し、国名探しなど、紙面をめくりながら活字に目を通す練習をする。
(2)スクラップ(切り抜き)をさせる。情報の取捨選択を通して、指導内容に目を向けさせる。動物の記事を集める、地元の記事を集める、サッカーの記事を集めるといった個に応じた対応もできる。切り抜き新聞をつくる、図鑑をつくるなど目的をはっきりさせると生徒の活動が活発になる。

【ワークショップ】実際の紙面から個人で教材をつくりました。

<参加者の実例1>コラージュ写真に見出しを付ける(小学生)
 共通のコラージュ写真(複数の写真を組み合わせたもの)をワークシートに貼り、見出しを付けさせる。
(1)個々で写真を見て感じたことを書く
(2)先の設問ではたくさん言葉が出て拡散していくと思われるので、グループで「コラージュ写真を作った人が一番伝えたかったこと(たくさんの写真のうちで主役はどれか)」を考える。大きさや配置などを手がかりにする。
(3)それを元に個々で見出しをつける。

<参加者の実例2>部首ごとに漢字を集める(小学生)
 字の大きな見出しを使い、例えば「さんずい」など部首ごとに漢字を集める。習っていない漢字でも興味を持って読もうとするだろう。

<参加者の実例3>投書にアドバイス(中学生)
 「ペットを飼いたい」という小学生の投稿があったので、それを読んで、この子に先輩としてどんなことをアドバイスするか書く。
 
<参加者の実例4>熟語の仲間分け(小学生)
 記事から二字熟語を書き出し、意味を調べる。
 熟語には(1)似た意味の言葉の組み合わせ(2)反対の意味の言葉の組み合わせ(3)前の漢字が後ろの漢字を修飾—-という種類があることを説明し、仲間分けをする。
【この記事はサイトのみの掲載です】

「月刊NIE」の記事を掲載しました

 2012年10月から、毎月最終水曜日にNIEの特集紙面「月刊NIE」を掲載しています。その中から、2つの連載記事をサイトに掲載しました。
 教師向けコンテンツでは、新聞を使った授業の様子や指導方法について取り上げた「実践 わたしの活用術」があります。ファミリー向けには、このサイトで提供しているワークシートを実際に試していただいた「遊びながら学ぼ」をお届けします。
 本日掲載した記事へのリンクは下記の通りです。
<実践 わたしの活用術>
(1)新聞記事から四季を感じる(小学1年・生活)
(2)プロの助言から表現法学ぶ(小学4年・国語)
(3)問題を解き感想文を交換(小学3年~・朝の学習)
<遊びながら学ぼ>
漢字探し
仲間の漢字探し

[実践 わたしの活用術](3)問題を解き感想文を交換(小学3年~・朝の学習)

友達の意見聞いてみよう 社会への関心高まる

問題を解き感想文を交換

小禄南小学校 城間麻愉巳先生

対象 小学3年生~
教科 朝の学習
指導時間 15分

【授業の様子】
 「南極にすむコウテイペンギンが旅に…」。3年4組に元気な声が響く。月曜日の朝の学習が子ども新聞ワラビーから始まった。
 ペンギンの生態を紹介する「ニュースアラカルト」の記事を使ったワークシートの問題を解き、感想を書き込む。「朝8時に泳ぎ始めたとしたら昼の1時までずっと泳ぎっぱなしなんだね」「すごい」。城間麻愉巳先生が問いかけながらヒントを与えていく。子どもはそれに応えながら、答えを導き出していく。
 感想を書くだけの取り組みから始まった朝の学習。しだいに子どもたちは、見出しを付けたり、内容を読み取ったりするなどの問題をこなすようになった。ウミガメの話題を取り上げた後、図書館から関連する本を借りてきた子も。城間教諭は社会への関心の高まりを実感しているという。
 週1回、15分だけのNIEタイムが生徒たちの世界を広げるきっかけをつくっている。

【授業の手順】
(1)みんなで記事を読む
 ワークシートの記事を全員で音読する。それぞれ面白いと思ったところに、蛍光ペンで印を付ける。
(2)問題を解く
 ワークシートの問題を解く。教師は子どもに、話しかけてヒントを与える。
(3)感想を書く
 記事についての感想を書く。書き終えたらグループ内でワークシートを交換して、それぞれの感想を読む。数人に発表させる。

 

【ねらいとポイント】

小禄南小学校 城間麻愉巳先生

■ねらい
 新聞に慣れ親しんでもらい、自分なりの感想や意見を書けるようになることが目標です。子ども新聞は、親しみやすい表現を使っていて、漢字にルビが付けられていて教材として使いやすいです。
 続けていくうちに疑問に思った点や自分の意見を書く子が増え、上達が見られます。互いの感想を読むことでいろいろな意見があることを知ってもらいたいと思います。
■ポイント
 時間が15分と短いため、短文の記事を使います。動物や自然現象など興味を持ちそうな記事を選んでいます。全員で音読することで読むのが苦手な子の理解を助けることができます。
 クラスメートが持った感想について否定的な意見を言わないという約束事をつくりました。みんなが意見を述べやすい雰囲気をつくることを心掛けています。

「実践わたしの活用術」は毎月最終水曜日の「月刊NIE」のページで連載します。