NIE「高いニーズ」 研修で活用増  沖縄県立教育センター

 県立総合教育センターの夏期研修でNIEが取り上げられることが増えた。本年度はNIE単独の1日研修も初めて開催された。参加者は定員を上回る52人に上り、担当者は「ニーズは高い」とみている。

NIE短期研修に参加した教員は、意見を交わしながら切り抜き新聞を作った=7月30日、沖縄市の県立総合教育センター

 NIE単独の研修は7月30日に開催。午前9時から午後5時まで理論編やワークショップ、実践事例発表をした。センターの甲斐崇研究主事を中心に沖縄タイムスの具志堅学記者がワークショップを行い、実践者として中原小学校の仲松久弥教諭、興南高校の石川美穂教諭が事例を紹介した。
 離島の学校からの参加も9人と目立った。甲斐主事は「推進協議会主催の教師向けセミナーは土曜日で、夏休み中にあるセンターの研修の方が参加しやすい。実践は広がっているが、まだ(新しい参加者を)掘り起こす作業は必要と感じた」と分析した。
 センターの夏期研修でNIEが取り上げられたのは2012年度が初めて。小学社会科、中高社会科の短期(1日)研修の一部としてともにNIEアドバイザーの兼松力教諭、佐久間洋教諭が講師を務めた。13年度に甲斐主事がセンターに赴任してNIE出前講座も始まった。本年度はセンター主催の研修で5講座291人がNIEを学んだ。

ブラジルで行われたサッカーのワールドカップをテーマに製作した切り抜き新聞

先生たちも新聞活用法学ぶ NIEアドバイザー、自校で研修会

生命や郷土愛 道徳教材探す 大里中学校

 南城市立大里中学校の校内研修で21日、NIEが取り上げられ、記事を道徳の教材にするワークショップをした。

道徳の授業で使える記事を探して設問を考える教員=21日、南城市立大里中学校

 同校の兼松力教諭(日本新聞協会NIEアドバイザー)が講師。道徳で教える24の内容項目をワークシートに例示し、どの項目の教材になるか選んだ上で生徒への発問を考えた。兼松教諭は記事から答えを探せるものではなく、生徒の考えを引き出せる発問がよいと助言した。
 熊本市で犬猫の殺処分がゼロに近づいているという記事を「生命の尊重」「よりよい社会の実現」で、方言札の記事を「郷土愛」で使う案などが発表された。
 携帯電話に出ないとゲームやメールができなくなるアプリを米国の母親が作った記事を選んだ波照間生子教諭は「作り物的な教科書と比べて新聞記事は新鮮で生徒の食いつきがよさそう」と手応えを話した。

記事読み聞かせ コツと実践紹介 比屋根小学校

 沖縄市立比屋根小学校の教師が22日、学習に新聞を使うNIEの基礎と実践例を学んだ。日本新聞協会NIEアドバイザーの佐久間洋教諭が在籍しており、講師を務めた。

気になった記事を紹介し合う教員=22日、沖縄市立比屋根小学校

 教師と児童の役割分担をして記事の読み聞かせを体験。佐久間教諭は「ただ読み上げるだけでは駄目。言葉に注目したいときは意味を問い掛けたり、狙いを持ってキャッチボールしながらやってほしい」と呼び掛け、授業の導入部分に取り入れるなど具体的な助言もした。
 比屋根小では佐久間教諭が赴任してきた本年度から、6年生が週末の宿題で保護者コメント付きの新聞スクラップに取り組んでいる。担任の仲泊元教諭は「初めは選んだ理由もなかなか書けなかったが、10回ほど続けたころから書く量が増えた。親のコメントを読んで子どもが視野を広げている」と報告した。

政府原案と記事読み比べ 集団的自衛権テーマ おきなわNIEセミナー

 教員向け研修会おきなわNIEセミナー(主催・県NIE推進協議会)が18日、沖縄市の県立総合教育センターで開かれた。30人余りの教員が「初心者向け」と「社会科授業づくり」の2講座に分かれて新聞活用を学んだ。

集団的自衛権行使の閣議決定案原文を読みながら意見交換する教員=18日、県立総合教育センター

 社会科の講座は集団的自衛権行使の閣議決定案が題材。NIEアドバイザーの兼松力大里中教諭が新聞に載った案の原文を読んで疑問や不明な点、意見を書き出した後、記事が指摘する論点と付き合わせる手法を紹介し、教員が体験した。
 兼松教諭は「原文を先に読んで考えた後で、さまざまな意見に触れると納得や疑問が(生徒の中に)出てくる。読む順番が逆だと特定の意見に流されてしまう」と時事問題を授業で扱う留意点を述べた。
 初心者向け講座では、ともにNIEアドバイザーの甲斐崇県立総合教育センター研究主事、佐久間洋比屋根小教諭が写真や4こま漫画を使った実践例を説明した。次回のセミナーは10月4日、新聞社によるワークショップなどを行う。

記事集め夏休みの宿題に 大里中生、こつ学ぶ

 夏休みの宿題で新聞記事を集めるため、新聞の読み方を学ぶ授業が2日、南城市立大里中学校であった。全ページの見出しを10分間で読み、気になった記事について1分間で説明した。

新聞を広げ、気になった記事を紹介し合う生徒たち=南城市立大里中学校

 社会科の兼松力教諭が2年生に毎年課している宿題は、沖縄に関する記事を1人30枚以上集めること。休み明けに3人ほどのグループをつくり、記事を持ち寄ってテーマを定め、切り抜き新聞を作成する。
 この日の授業は、見出しを読むことで大意をつかむのが狙い。生徒は選んだ記事についてグループ内で1分間、話し続けるという課題に取り組み、達成すると拍手が起こった。
 兼松教諭は「ほかの人が意外な記事を選んでなかった? 新聞は自分の世界を広げる道具になる」と、生徒に語り掛けていた。

[実践 わたしの活用術](19)コンクールを授業に活用(小学6年・総合的な学習)

友の意見 考えるヒント ペアよりグループで

コンクールを授業に活用

比屋根小学校 佐久間洋先生

対象 小学6年生
教科 総合的な学習
指導時間 1時間

【授業の様子】
 比屋根小学校の6年1組の児童が、新聞記事を貼り付けて自分の感想を書いた「いっしょに読もう!新聞コンクール」の応募用紙を取り出した。4人で向かい合ってグループ活動の開始だ。
 佐久間洋先生が「グループ活動で大事なことは何ですか」と問いかけると、「お客さんにならないこと」と大きな返事が返ってきた。主体的に取り組むことを声に出して確認した。
 1人が記事の説明と感想を述べるとほかの3人が記事に対する意見を言う。記事を提示した児童は一生懸命メモを取っている。
 「いつも言っているようにメモを取るときは文で書くと間に合わないよ。大切な言葉だけでいいんだよ」。佐久間先生の助言が響く。ふだんからスピーチなどでメモを取りながら聞くのを習慣にしているだけあって、メモ帳を取り出して友達が発する言葉を書き留めていく。
 障がいのある人の要望で那覇空港新国際線ターミナルに優先席ができるなど改善があったとの記事について「もっと点字板が増えたらいい」「優しい施設を増やしてほしい」などの意見が出て、記事を選んだ子がその意見を受け止めて文章にしていった。

【授業の手順】
(0)宿題
 コンクール応募用紙に新聞記事を貼り、感想を書くことを宿題にする。
(1)目当て、手順の確認
 「世の中の出来事に関心をもとう」という目当てを確認する。次のグループ活動の手順を確認する。
(2)グループで話し合い
 1人が選んだ記事を紹介して感想を言う。ほかの3人はその記事への感想を言う。記事を提示した児童は友人の意見をメモする。以上を全員分繰り返す。
(3)友人の意見を書く
 応募用紙に友人の意見を要約して書く(150字以内)。
(4)自分の考えを書く
 友人の意見を踏まえて考えたことを書く(300~400字)。

 【ねらいとポイント】

比屋根小学校 佐久間洋先生

■ねらい
 社会の出来事に関心を持つこと、さらに友達と話し合うことで出来事への考えを深めることができます。
■ポイント
 45分でやるには話し合いを中心にし、前後にある自分の考えを書く活動は宿題にします。友達の話を聞くときにメモを取るのが不可欠です。
 ペアよりも多くの意見が出て多角的な深まりが出るので4人グループで意見交換しました。

 

 

【関連記事】

いっしょに読もう!新聞コンクール 読み解き 解決策探る

 「いっしょに読もう!新聞コンクール」は日本新聞協会が募集する全国規模の新聞感想文コンクール。友人や家族の意見を聞き取って書き、それを踏まえた自分の意見を書くのが特徴だ。他者の意見を読み解いたり、文章にまとめたりする過程が「言語活動の充実」を具体化する実践といえる。
 国語的な活動であると同時に社会科の授業にもつながるとの指摘がある。福岡県・飯塚市立小中一貫校頴田(かいた)校の柴田康弘教諭は「社会科では判断の分かれる社会問題等について他者との議論を通じて、その解決策や代替策を探るといった授業が求められている」(日本新聞協会発行『NIEニュース75号』から)として、コンクールの仕組みが社会科の授業に援用できるという。
 過去の応募作を見ると、スポーツ記事では応募者の感想以上に議論が深まることはまれで、授業の際には記事の選択に助言が必要となりそうだ。

「実践わたしの活用術」は毎月最終水曜日の「月刊NIE」のページで連載します。

ニュース 写真で発見! 北国・佐手・奥の3小学校で出前講座

 国頭村立の北国、佐手、奥の3小学校合同のNIE授業と教員の研修会が5月28日、北国小学校であった。県立総合教育センターの出前講座を利用して、3~6年の児童21人が気に入った写真を選んだり、新聞のよさを探したりした。

教諭が見守る中、教育センターの出前授業で新聞から写真を選んで切り抜く児童=北国小学校

 教育センターの甲斐崇研究主事が講師。児童は日ごろから3校で合同授業を受けることがあり、この日は学校をまたいで学年ごとに分かれたグループで2時間学んだ。各校の教諭10人ほどもグループを回って児童に声を掛けた。5年生の国語にある新聞のよさを探す授業では、実際の新聞をめくって記事や広告の内容を分類。児童は「持ち運べる」「一目でニュースが分かる」など長所を挙げていた。
 宇良李涼(りずむ)さん(北国小6年)は「ふだん新聞を読まないけど、自分の時間に合わせて読めるのがよいところと分かった。写真で分かることが多いことも分かった」と感想を話した。

「ことばの貯金箱」を体験 第5回おきなわNIEセミナー

 教員向け研修会「第5回おきなわNIEセミナー」が17日、那覇市の琉球新報社で開かれ、23人がワークショップを通して学んだ。

新聞から選んだ言葉を紹介し合う教員=那覇市天久・琉球新報社

 メーンのワークショップは新聞から好きな言葉を集めていく「ことばの貯金箱」。元中学校教諭の渡辺裕子さんが東日本大震災の後、被災地の学校や地域で始めた。
 セミナーではNIEアドバイザーの古波津聡コザ小教諭が講師を務めた。新聞を1人1部ずつ配り、参加者は「大切にしたい言葉」「わくわくする言葉」などを切り抜いていった。グループに一つの箱に紙片を入れるときに「チャリーン」と合言葉を言うのが「貯金箱」らしい。
 集めた言葉を箱から出してグループの中で分け合い、各自が色画用紙に貼り付けて作品にする。紙片をつないで言葉にしたり、ペンでハート形に囲んだり、補足の文字を書き足したりした。
 グループで発表し合った後、古波津教諭が「言葉で人に優しさを与えることができる」など九つのキャッチフレーズを紹介。そんな言葉の力をたくさん持っている「ことばの億万長者」はどんな人だろうかと問い掛けると、参加者からは「人と自分に奇跡を起こすことができる」と名言が飛び出した。

各自が切り抜いた言葉を集め、分け合う。ほかの人が選んだ言葉とも出合う

 参加した寄宮中教諭の安次嶺勝江さんは「言葉から発想が広がっていくのに感動した。小学校の先生方が気軽に取り組んでいるのが分かってよかった」と感想を話した。
 この日はほかに写真に吹き出しを付けたり、記事を読み聞かせるワークショップを実施。中学校や高校での応用について、兼松力アドバイザー(大里中教諭)は「教科には組み入れにくいが、学活などでアレンジしてほしい。個々に対応でき、正解を求めないので能力差があっても取り組め、相互理解を深められる」と助言した。

 初報はこちら